ペットビジネスの根深い闇
「ペットショップではいま、猫が爆発的に売れています。販売頭数は統計を始めた'14年から2年で2割増え、年間16万頭が販売・譲渡されているバブルの状態。最近では、犬のブリーダーの3割が猫のブリーダーも兼ねているほどです。犬と猫は、まったく違う動物だというのに」
そう語るのは、ペット業界を取り巻く問題に詳しい、朝日新聞記者でジャーナリストの太田匡彦さんだ。
過熱する猫ブームは、ペットビジネスの世界にも異変をもたらしている。猫の繁殖が比較的容易なことも一因。犬の繁殖には屋外にある程度のスペースを必要とするのに対して、猫はマンションなど屋内の一室で繁殖できるからだ。'17年に飼育頭数で猫が犬を逆転したが、販売価格もその傾向をなぞっているという。
「現在、1番人気のスコティッシュフォールドには、犬よりも高い30万円の値段がついています。50万円で売られているケースもある」(太田さん、以下同)
かつてペットは店で「買う」ものではなく、雑種を人から譲って「もらう」ものだった。特に犬の場合、スピッツ、マルチーズなどの血統種をペットショップで購入するのは、もっぱら富裕層に限られていた。
「でも、店で血統種を買うのが一般的になってきた。そのあとを追って、いまでは猫も似た状態になっている。若い人ほど、その傾向が目立ちます」
ところが、ペットビジネスをめぐる実態は、いまだにあまり知られていない。
「ブリーダーの繁殖から、ショップでの小売りまでの間で、犬猫あわせると年間およそ2万5000頭が病気などで死んでいます」
環境省の最新統計によれば、'16年度に殺処分された犬猫は5万5998頭。その数は年々、減少している。それなのに、殺処分の半数に近い犬猫が流通過程で命を落としているというのだ。
「とりわけ猫は、犬よりも新しい環境になじみにくい。下痢や嘔吐が続くなどして死ぬケースもあります。環境が変わると免疫力が落ちるなど、感染症にかかって死ぬことも多い」