キャラクターの性格づけ
井上さんはこれまで『白い巨塔』、『14才の母』など数多くのドラマや映画の脚本を手がけている。キャラクターや物語を作る過程は小説も脚本も同じだという。
「キャラクターを作るとき、履歴書的なものは一応、考えます。
それ以上に重視しているのが、“喫茶店で頼んだコーヒーが来ないときにどうするか”といった、日常の場面でその人がどうするかなどの性格づけです。
ちなみに、主人公の秋津はサービスしてもらってもう1杯飲むような、ちゃっかり系のおじさんです(笑)」
本作の登場人物は20人を超える。そのひとりひとりが生き生きと描かれている背景には、井上さんの幼少時代のエピソードが関係ありそうだ。
「子どものころ、リカちゃん人形で遊ぶのが好きだったんです。リカちゃんはもちろん、友達のいづみちゃんやボーイフレンドのわたるくんなども登場させて2時間くらいの長編の物語を作り、人形を動かしながらひとり7役でセリフをあててました(笑)。
あと、幼稚園のころ、寝る前に父が本を読んでくれたのですが、絵本や童話ではなく、『太閤記』とか司馬遼太郎の歴史小説だったんです。きちんと理解できていたかどうかは覚えてないのですが、でも、続きを知りたいとは思っていました」