『目の見えない精神科医が、見えなくなって分かったこと』が話題になっている、福場将太さん。見えなくなってから見えてきたものについて、丁寧に綴っている内容が多くの人々の心を打っているという。苦労を乗り越えてここまで来たのか……と思いきや、意外にその実態はユーモラスだ。そんな福場さんが今考えていること、世間に伝えたいこととは――
かつては炭鉱の町として知られ、現在では米作りや渡り鳥のマガンの中継地としても知られる北海道美唄市。
自然豊かなこの町の病院に、ギター演奏はセミプロ級のシンガー・ソングライターで、公式HPでは中低音のバリトンボイスでラジオDJをこなし、推理小説までしたためる多才な男性が勤めている。
福場将太さん、本職は精神科の医師である。そしてもうひとつ、彼には特徴がある。完全に目が見えない、視覚障害者でもあるのだ─。
悩む人々の心に響く言葉たち
そんな福場さんがこのたび、初の著書である『目の見えない精神科医が、見えなくなって分かったこと』(サンマーク出版)を上梓した。「見えなくなったからこそ見えてきたもの」について丁寧に綴られた言葉の数々が、目が見えているのに「見えない」と悩んでいる人たちの心に響いた、と各所で話題となっている。
反響を当人に尋ねると、
「美唄市は小さな町ですから、僕の本が大々的に宣伝されている場所があるわけではなく、大騒ぎされた……ということもなくて(笑)。北海道の新聞が取り上げてくれて、それから患者さんに尋ねられ始めたくらいですね。僕の場合、患者さんに助けられていることが多いので、あまり『すごい人』に見られていないところもあります。また、文章を書くことは好きでしたが、ギターや作詞、作曲などと同じく、趣味の延長でしたから」(福場さん、以下同)
と謙遜しつつ、ほぼいつもどおりの日々であることを、優しいトーンで話す。
そんな福場さんに、これまでの経緯と、今回の書籍を通じて伝えたいことを伺った。