NHK『チコちゃんに叱られる!』様
年に何本かオンエアの終わった次の日に「ねえ、ねえ、昨日のアレ見た?」とテレビ業界人が騒然となる「プロが見てヤラレタ!と悔しがった」手法の番組が存在する。
やたらと「平成最後」の枕言葉がついた2018年の例をあげれば『チコちゃんに叱られる!』(NHK)がその筆頭であろうか。
好奇心旺盛な5才児というキャラクターのチコちゃんが大人たちに素朴な疑問を突きつけ、答えられないと「ボーッと生きてんじゃねーよ!」とブチ切れる。この決めセリフは今年の流行語大賞にもノミネートされた。チコちゃんのリアルに変化する豊か過ぎる表情のCGの完成度を含めて、手垢のつきまくった感のある雑学バラエティも新しい手法を用いれば視聴者にまだまだ受け入れられることを証明した。
特番の『のぞき見ドキュメント 100カメ』(NHK)も業界内でかなり話題になった。『週刊少年ジャンプ』編集部にマジで100台のカメラを設置。あとはひたすらそのカメラの切り返しのみで構成された超シンプルで潔い手法は、テレビの世界で飯を食っているプロ達をも唸らせた。
以前の担当回でも書いたがサンドウィッチマンの『病院ラジオ』(NHK)もそうだった。病院内にラジオ局を開局して患者さんとその家族を相手にサンドウィッチマンがDJをする感動ドキュバラ。これも斬新な手法であった。
あれ? 全部NHKの番組じゃあーりませんか。
そう、最近のNHKっていわゆる「攻めてる」プログラムが多いと思っているのは私だけ?
秋からまた始まった人形劇✕赤裸々トークショー『ねほりんぱほりん』(NHK)も今シーズンは以前にも増して扱うテーマが飛ばしまくり。この前やった『全告白 元極道の過去と現在』の回なんか「フィリピンで腕を落とせば保険金で3000万円入る」って可愛い豚の人形劇でやるエピソードじゃないって。
当事者にしか語れないハードにも程があるヤバい事実を、人形劇であくまでもポップに見せていく。これも攻めてる手法だ。
過去に何回かNHKの企画募集の会議に参加したことがあるが、あの局は「民放ですでにやった既視感のある企画」をもの凄く嫌う。ヒットした番組をアレンジした類似企画が多い民放と違い、突然変異的に「なんじゃこりゃ?」って番組が出てきやすい環境にあると思うんだよな。
よって今回は、平成最後の年に攻めていたNHKの各番組を代表してチコちゃんに「ボーッとテレビ作っててすいません」賞を差し上げ、勝手に謝りたい。
私もチコちゃんから叱られないためにも、もっと新しい手法の番組が出来るよう頑張らねばイカンな。海より深く反省!
<プロフィール>
鮫肌文殊(さめはだ・もんぢゅ)
放送作家。’65年神戸生まれ。古舘プロジェクト所属。『世界の果てまでイッテQ!』など担当。渋谷オルガンバー「輝け!日本のレコード大将」(毎月第2金曜日)などでの和モノDJ、関西伝説のカルトパンクバンド・捕虜収容所のボーカリストなど音楽活動も数多い。
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