水道事業の基盤を強化するためというのが政府の言い分。反対する野党は、水道料金の高騰や水質悪化、海外では失敗事例が多いなどと主張したが、両者の言い分は水と油。
結局、水道事業を事実上、民間企業に開放する改正水道法は6日、成立に至った。
安全な水道水を守る「コンセッション方式」とは?
「蛇口から出てくる水を直接飲めるのは、国連加盟国193か国中、16か国しかない」(前出・吉村代表)という日本の安全な水道水を守るため、法改正で注目されているのが「コンセッション方式」だ。
水道施設の所有権はこれまでどおり自治体が持ち、長期にわたる運営権を民間業者に売却し対価を受け取る方式。
「行政は予算制度なので素早く動けないが、民間であれば最初の10年間は投資をし、次の10年間で回収することができる」(前出・吉村代表)
というメリットを見越してのやり方で、静岡県浜松市は今年度から、下水道事業を民間に同方式で委託したという。
同市上下水道部の担当者に話を聞いた。
「料金の上げ幅を抑えるため、委託しました。民間企業が20年間運営し、計約86億円のコスト削減ができると見込んでいます。上水道についても、現在は年約10億円の黒字ですが、2020〜'21年には赤字化が見込まれるため、現在検討しています」
海外の失敗例も承知のうえで、仏パリの現状を視察したという。再び担当者の話。
「パリでは'85年から'09年まで約25年間、民間が運営をしましたが、その間に水道の漏水率が22%から4%と改善しました。水道料金も約2・7倍上昇していますが、設備投資によるものと考えられます。フランスでは他の自治体も民営化していますが、9割は契約を更新しています。ですから、今の日本の報道は偏っているように感じます」
南米ボリビアでは民営化による水道料金の値上げで暴動が発生し死傷者が出たり、米アトランタでは水質が悪化するなど、失敗例も少なくない。'00年から'15年までの間に、37か国235のケースで再公営化されている。
前出・吉村代表は、
「長期間、1社に任せると市場の競争原理が働かず、値上げやサービス低下につながる」
と問題発生の土壌を指摘。