「唾液にはサラサラ唾液とネバネバ唾液があり、分泌される唾液腺や成分が異なります。ネバネバ唾液には免疫物質など有効な成分が含まれており、質に大きく関わっています。しかし、ネバネバ唾液を出すことだけが重要ではなく、両方がバランスよく出ることを目標にしましょう」
サラサラ唾液はリラックスしたときや食事のときに出て、ネバネバ唾液はストレスを感じたり、活動的に行動しているときに出る。緊張したとき、口が渇いてネバネバになるのは、ストレスに対抗して免疫力を上げるために、ネバネバ唾液が出るためだ。
しかし、ネバネバ唾液を出すためにストレスをかけるのは本末転倒。
「90分のストレッチとヨガの直後に唾液中のIgAの濃度を上がることが研究で確認されています」
活動的に動いたり、軽いスポーツがオススメ。
「'16年から、口腔機能低下症という病気が新たに発表され、その症状のひとつに唾液力の低下があげられています。口腔機能低下症になる前に対策をとるといいですね」
食べ物とマッサージで唾液力が上がる
では、実践的に唾液力を上げるには、どうしたらいいでしょうか?
「まずは、よく噛むことです。噛むことにより唾液腺が刺激されて唾液がどんどん出てきます。やわらかいものをよく噛むといわれても、なかなか実践できないので、かたいものを食べる、大きめにカットした野菜を食べるなど、食卓での工夫が必要です。
「次に水分をこまめにとることをオススメします。唾液が作られる量と同じ、1日1~1.5リットルは飲みましょう。水やお茶がオススメですが、お茶にはカフェインが含まれていて、利尿作用があるので、ぬるま湯で薄くいれるといいでしょう」
次はマッサージ。唾液は耳の下の耳下腺、あごの中の顎下腺(がっかせん)、舌の下の舌下腺から出る。そこをマッサージすると唾液が出てくるという。
「耳下腺がいちばんわかりやすいのでオススメ。おたふく風邪のとき、膨らむ場所です」
耳下腺マッサージは顔のリフトアップにもいいかも。
耳下腺マッサージのやり方は、耳の下より少し前の位置に3本の指を当て、円を描くように動かす。顔のリフトアップを狙うなら、下から引き上げるようにマッサージ。2分以内で10回以上、1日、何回行ってもOK。
食べ物は、ヨーグルトなどの発酵食品と繊維質の多い食品がオススメ。
「腸内と口の中は相互作用があるといわれています。腸の周辺には免疫細胞が集まり、IgAも多く出ています。腸の環境を整えると、唾液のIgAも上がることが研究でわかっています。発酵食品や繊維質の多い食品で腸内環境をよくして、唾液の質も上げてくれます」
最後は先ほども出てきた運動。具体的には何を?
「適度なウォーキングやヨガなどの運動は、唾液の質の向上に大きく役立ちます」
健康で美しく長生きしたいなら唾液力を上げることがポイント。今日から対策を実行して、ダラダラ~と唾液を出しまくっていこう!
1.よく噛む
2.水分をこまめにとる
3.マッサージで唾液腺を刺激
4.ヨーグルトや納豆などの発酵食品、繊維質が多い食品をとる
5.ウォーキングやヨガなど軽い運動をする
〈プロフィール〉
槻木恵一教授◎歯科医師。神奈川歯科大学口腔科学講座教授。腸内環境と唾液中のIgAの関係をあきらかにし、「腸―唾液腺相関」を発見。現在も唾液中のIgAの研究を続けている。
(取材・文/山崎ますみ)