当時、中国は市場経済が始まったばかりで、ドラマに出てきた風景からライフスタイルまですべて新鮮だった。そのあと、岩井俊二監督の『Love Letter』『スワロウテイル』、あるいは亀梨和也さんのドラマなど、日本の映画やドラマがいろいろな形で紹介され、若者の記憶に残った。

 つまり、1回目のブームの全員が画一化したコンテンツから、恋愛や少しマイナーな物語までに、幅広く共感できるようになったのだ。

「オトナの女性」が好き

 その後の大きな韓流ドラマ、アメリカドラマのブームの時代を挟み、この数年は第3の日本ブームになっている。とくに注目すべき点は、作品に出ている「オトナの女性」が多くの中国若者を魅了しているところである。

(出所)筆者作成/東洋経済オンライン編集部
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 石原さとみさんや新垣結衣さんから、天海祐希さんや石田ゆり子さん、30代から50代の「オトナの女性」の、映画、ドラマ、イベント、SNSでの活躍の情報が、インターネット社会の現在ではあっという間に中国でも拡散される。「いくつになってもかわいい」「きれい」「憧れる~」「格好いい」といったコメントが絶えない。

 その理由に、中国の女性が、年齢を重ねるとともに、自分が主役として活躍する「機会」が少なくなるため、彼女ら(が演じた役)のように悩みながら、たおやかに(変化を柔軟に受け止めつつも、芯強く)生きたいと、なんとなく思っているからだと言える。

 現在の中国の映画・ドラマを見ると、残念ながらまだステレオタイプな作品が多い。若い美女か、一見奇麗だが意地悪な姑、太っていて何でも干渉しようとする母親。つまり、現代の30、40代の女性を描写することが少なく、あっても単純化(仕事ができる未婚者、あるいは子持ちの母親)されている。

 出産してから、自分に合う役が急減し、落ち込んだとつぶやく女優もいた。つまり、女性を「若い女」「姑」「祖母」といった類型化することが多い。20代と50代の役の間に、視聴者が憧れる30、40代の役が少ない。そうした中で、中国の30、40代のニーズを満たしてくれたのが日本の映画・ドラマなのだ。