奇跡のような後輩Jr.との遭遇
◆21:30 最後の一曲。
万感の思いを込め、滝沢さんが最後に歌い上げたのは『WITH LOVE』。彼の主演舞台『滝沢歌舞伎』で歌われてきた、象徴的なナンバーだ。
たとえ遠く離れていようとも……。このくだりで、隣席の女性がしゃくりあげ涙をこぼした。私も落涙を防げなかった。みっともないけれど、鼻水も。
◆21:38 ショーが終了。
滝沢さんは深く頭を下げ、「このあと、みなさんお一人お一人におみやげをお渡ししますので」と微笑んだ。
◆21:40 会場前ロビー、滝沢さんの軌跡をちりばめた写真パネルの前でお見送りが始まった。
何か気の利いたことを言いたいと思うのに、頭が回らない。もう私の番だ。ほら、何か、考えて……。
結局、「がんばってください」としか言えなかった。
けれど彼はしっかりと目を合わせ、「ありがとう」とおみやげを手渡してくれた。私と滝沢さんの、最後の時間が終わった。
◆21:56 クロークでコートを受け取り、化粧室に寄る。
心もとない気持ちをなんとか立て直さないと……そう思いながら鼻をかんだ。
会場を出てエントランスに続く階段を下りると、いきなり目の前でエレベーターのドアが開いた。突然のことで面食らう。中から降り立ったのは、かくも美しい青年たち。
なんと、先ほどまで会場にいたSnow Man、そしてTravis Japanの面々だった。驚き、思わず「ふっか!?」(Snow Man・深澤辰哉さんの愛称)と声が漏れてしまう。
微笑み、両手を振ってくれる深澤さん。
さらに、すぐそばにいた川島如恵留さん(Travis Japan)の言葉に、おぼつかない胸は毛布を掛けられたようにぬくもった。
「素敵なステージでしたね……!」
私がショーの参加者とわかったのだろう、敬意といたわりを込めて、声をかけてくださったのだ。今、失意の底にあるだろう先輩ファンをおもんぱかり、態度で示してくれたありがたさ。
大切なファンとどう向き合うべきか? この思いやりこそは、彼らが滝沢さんから引き継いだものに違いない。人生の第2章に漕ぎ出した彼の魂は、間違いなく後輩たちが受け止め、さらに磨かれてゆく。
“滝沢秀明”は、ここにいる。彼が手がける作品に、後輩たちの振る舞いに。むしろ輝きを増して私たちはその存在を感じとることだろう。
今この瞬間、寂しくないと言えば嘘になる。ただ、おとなしくは待たない。会えずとも、思い、支え続ける決意をした。
彼の面影を見つけるのを楽しみに歩いていけばいい。“滝組”の絆は太く、“滝担”は強い。私たちは、ずっと“殿”についていく。
頼もしい後輩の心遣いに感謝し、私も強く一歩を踏み出した。
プロフィール
みきーる/ジャニヲタ・エバンジェリスト。ライター・編集者。
グループを問わずジャニーズアイドルを応援する事務所担。応援歴は25年超、3日に1度は現場参戦。著書に、『ジャニヲタあるある』(青春出版社)、『ジャニ活を100倍楽しむ本!』(青春出版社)など。
◆Twitter @mikiru
◆オフィシャルブログ 『ジャニヲタ刑事!』