11:30
「5~6年前から通算300回は参拝している」と板橋区のメーカー勤務・田代真紀さん(仮名、45)は振り返る。
近くに引っ越してきたのは、夫と別居するためだった。
「約10年前から夫は仕事のストレスで激しく酒を飲み、いっさい生活費を入れなくなった。2人の娘にお金がかかる時期だったので離婚を切り出したところ、“離婚はしない”の一点張りだったんですね。離婚については、娘たちも“あれじゃあ、仕方ないね”と認めてくれていました。今年の1月、やっと離婚が成立したんです。下の娘もようやく成人式を迎えましたし、今日は“毎日、無事にすごせています”とお礼参りをしたところです」
最近、久しぶりに会った元夫は人が変わったように反省していて、娘の親としていい関係を築けているという。
12:12
2か月に1回、先祖の墓参りに来るたびに祈るのは東京・世田谷区の飲食業・北中光義さん(仮名、43)だ。
「5年前、幼い娘が鼻炎になってからです。娘は常に口呼吸しかできなくて、鼻ではできないんですね。鼻毛で菌などが防御できないから、風邪やインフルエンザになりやすいんですよ。一昨日からインフルエンザで熱が出ています。すぐ治るといいんですが……。特に成長に影響しているというわけではないんですけれど、見ていて、かわいそうでね」
13:33
東京・豊島区の医療関係会社に勤務する出原浩子さん(仮名、34)は、元彼との関係に心が揺れている。
「交際歴2年で昨年冬に別れました。3歳年下の売れないお笑い芸人の卵です。デートは家で過ごすことが多く、プレゼントをもらったことも一度くらい。それは我慢できたんですが、私の扱いが雑になってきたのが不満だったんです。私の優先順位が低いんですよ。彼は何よりもまず先輩、次に親やきょうだいで、私はその下なんですね。
それでいったんは別れたんですが、こっそり彼が出ているライブに行くなど復縁したくなってきた。きっぱり別れたい気持ちもあるので“切れるものなら切ってください”と祈りにきたわけです」
女心は難しい。
15:43
東京・八王子市の主婦・鈴木洋子さん(仮名、65)は車で2時間以上かけて来た。自分のために祈るわけではない。
「ひとりは、オレオレ詐欺みたいなのにしょっちゅう巻き込まれている人。悪い因縁を切って欲しい。もうひとりは娘の婚約者。数日後に結婚式を挙げるんですが、盲腸になってしまったので、薬で散らしてもう少し頑張ってもらいたい。この時期に手術したら、結婚式場をキャンセルしなきゃいけないでしょう。とても金額は高いんですよ」
盲腸を切る縁を切る、ということか。
15:56
30歳前後の女性。
「主人と離婚したくて。内容は詳しくは言えません」
妊婦さんのようだった。お腹の父親は聞けなかった。
17:01
東京・文京区の主婦・井口タキさん(仮名、80)は背が高く、細身で背筋がしゃんとした品のある女性だ。それほど遠くない距離だが、電車を乗り継ぎ、カートを押して歩いてくるから大変だ。
「みな、小さな嘘をついたり、人に対して小さな悪いことをしたりして、穢れながら生きているでしょう。80歳を迎えたので、そういう穢れを少しずつとって身辺を清めたい。新しい年を迎えるにあたって、どうしても年内に来ておきたいと思いましてね」
命ある限り、できるだけ来るようにしたいという。