「人間としての扱いをしていない」

 岐阜一般労働組合の甄凱さんは40代の中国人女性がこうむった日本の横暴なマタハラを告発する。

「母国には夫と長女がいて1度、休暇で中国に帰国しましたが、再来日したときに妊娠がわかりました。茨城県の農業関係の会社から、子どもを堕ろせば技能実習を継続しますが、もし子どもを産むのであれば帰国しなさい、という選択を迫られたと相談を受けました

 結局、女性は堕胎を決断せざるをえなかったという。

「人間としての扱いをしていないですね。ケガでも小さいケガならそのまま仕事をさせて、大きなケガだと帰国を強いる。働けない人の面倒は見ないということです」

 と前出の甄凱さんは、怒りをにじませる。

 妊娠を理由にした強制帰国をめぐっては、その違法性を訴えた中国人実習生が裁判で勝利したケースもある。判決は確定し、先進国とは思えない日本企業の“実習生使い捨て”が白日の下にさらされた。

 つい先日、可決・成立した外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法の審議の最中、最低賃金以下の賃金で働かされていたり、技能実習生の逃亡防止のためにパスポートを取り上げたり、パワハラ・セクハラが当たり前のように行われている実態が次々に明るみに出た。

 政府は、'25年までに50万人以上の外国人の就業を目指すという。その中には、単純労働分野での受け入れも含まれる。

 言葉も文化も違う、さまざまな国からの人々を、単なる労働力、使い捨てではなく、日本人と共存する生活者としてどのように受け入れていくのか。日本語の習得は? 賃金や労災なども日本人労働者と同じように待遇できるのか?

「国は制度を作ったけど、何も責任を取らないという姿勢です」(前出・佐々木さん)

 という技能実習制度を反面教師に、パワハラ、セクハラ、マタハラなどがない意識改革が、外国人労働者を雇い入れる側にも必要だ。