「業務時間は午前8時~午後4時になっていますが、実際は部活動の指導などを含め午前6時半~午後9時なんです。残業代は一切つかず、定期昇給は13年前に一方的に廃止され、6年前からはボーナスもゼロです。われわれにとっては死活問題です」
と40代の男性数学教諭は怒りをあらわにする。
「タイムカードは事務職員が前倒しで退勤打刻してしまうのでひどい」
と50代の男性英語教諭。
17人の教諭ら、“儀式”をストライキ
東京都千代田区神田錦町の私立男子校「正則学園高校」(生徒数約560人)で8日朝、同校教諭・非常勤講師計17人らが正門前に集結し、理事長室で毎朝行われる“早出挨拶儀式”をストライキした。
まだ薄暗い午前6時半、教師たちはA4のコピー用紙に文字を書いてつなげた横断幕を掲げ、学校前の通行人にビラを配り、登校する生徒には「お父さんかお母さんに必ず渡してね」と保護者あてに理解を求める封書を手渡した。
「ボイコットするのは挨拶儀式だけです。授業までやると、生徒に迷惑がかかりますからね」(前出の数学教師)
行動を起こした同校教師らは、関東の私立学校教師らでつくる労働組合『私学教員ユニオン』に加盟し、学校に対して、長時間労働や残業代不払い、非常勤講師の低待遇などの是正を求めている。
中でも、70代理事長への挨拶儀式は負担が大きいとして、「その時間があれば生徒のための授業準備や教材研究をしたり、身体を休めることができる」(同ユニオンの見解から)などと“時間の無駄”ととらえている。
私立学校で経営者側にたてつけば、勤務評価などで嫌がらせを受ける可能性もある。そのリスクを踏まえても決起したのは、切羽詰まった現状があったからだ。
「私は早朝5時半に自宅を出ますが、始発電車で来る人もいます。さすがに朝が早すぎるので、妻に“朝食を作ってくれ”とは言えない。同僚はみなカップラーメンとかコンビニの弁当ですませているから、健康診断の結果はひどいもんですよ」
と前出の英語教諭。
同ユニオンの担当者によると、同僚教師が体調を崩して入院したり、5~10年前には過労死を疑いたくなる死亡例も。あまりの“ブラックスクール化”に辞職する教師が続出しているという。
とりわけ、理事長への“挨拶儀式”は常軌を逸している。