クリーニングに出すと…
狙われた新成人は、ほかにもいる。
D子さんは、知らないうちに着物にソースをかけられていた。
「レンタルした着物を返却する際、D子さんは背中にソースをかけられていることに気がつきました。背中から下に80センチほどの範囲でソースがかけられていました。着物や帯だけでなく裏地、襦袢にまで染みていました」
と明かすのは首都圏のレンタル業者。
そのとき、D子さんが着ていたのは白っぽい色の振り袖だった。
「D子さんは“クリーニング代は必要なのか”と不安がっていましたが、故意に汚したわけではなく、事件の被害者なので追加料金は請求していません。着物は染み抜きしていますが、完全にきれいにするのは難しい。それよりも、成人式は一生の思い出ですからトラウマにならなければいいんですが……」(同)
とD子さんの胸中をおもんぱかった。
ソースがかけられてしまった着物をクリーニングすると、どれくらいお金がかかるのだろうか。
杉並区にあるドライクリーニング専門の業者は、
「ソースはワインなどと違い、繊維自体が染まるわけではないので洗えば落ちます。ただ、染み抜きが必要な場合、うちだと安くても5000円はかかります。汚れの範囲や素材などで金額は変わるため数万円かかることもあります」
と説明する。
斎藤容疑者の蕨市の自宅は単身者用のアパートで、6畳のワンルーム。家賃は月4万円。犯行現場まで電車で約1時間半かかる。
同じアパートの男性住人は、
「(斎藤容疑者を)まったく見たことがない。そんなひどいやつが住んでいるとは思わなかった」
と驚いた。
振り袖だけでなく、新成人の心や思い出も汚した卑劣な犯行─。被害者の大人な見識と周囲の思いやりある対応だけが救いだった。