体罰を受けたAくんは、中学時代は野球部だった。自宅近くの1歳下の後輩によれば、
「確かキャプテンをやっていたと思うけど、少しワルい感じで、先生にたてつくようなタイプだった」
という。高校でもいったんは野球部に入部したが、すでに退部している。また、高校ではピアスをしていた。
「イキがってはいるけど、特別なワルではないですよ。ピアスや茶髪は校則違反だけど、うちの高校ではまあまあ、いますからね」(同校2年の男子生徒)
「先生がかわいそう」
かたや、Aくんを殴った教諭は昨年4月に同校に赴任。Aくんが一時期所属していた野球部の顧問という間柄だった。体育教師で生活指導も担当していた。生徒の評判はすこぶるいい。
「生徒の態度が悪いと、強い口調で叱ることはありますが、人情味があって、とてもいい先生。殴るような先生じゃない。先生が一方的に悪いとされるのはかわいそう」
と複数の生徒がかばった。
体罰事件から2日後、殴った教諭はAくんとその両親に、
「ついカッとなって殴ってしまい、申し訳ありませんでした」と謝罪している。
Aくんと両親は、
「許せません」
と一部のマスコミに話したという。
同校は、「体罰をした教師が悪かった」(信岡新吾校長)
とコメントしたが、ネット上では“ことなかれ主義”などと叩かれ、生徒側への批判はおさまらなかった。
事件のことはSNSを中心に、あることないことが書かれ、広がっていった。Aくんや撮影した生徒らの実名が公開されたり、自宅や家族の職場、携帯番号とする情報まで明かされた。生徒のブログを探り当て、掲載画像から“飲酒疑惑”を指摘する声も。教師を陥れた計画的犯行とする見方は消えなかった。
「ピアスをしている息子を認める親も親だという意見もあります。ホントにもう、何がなんだかわからなくなって、みんなSNSにはうんざりしていますよ」(同校2年の別の男子生徒)
東京都教育委員会はこの事件について、次のように話す。
「事件の約30分後に校長から報告を受けております。当該教諭は、以前の学校でも同校着任後も、体罰などの問題のなかった先生でした。被害者の生徒さんについては、評価するところではありませんし、プライバシーの問題もあるので話せません」(担当者)
体罰を与えた教諭はどうなるのだろう。
「学校が当該教諭や被害生徒、動画を撮った生徒、目撃者などに詳細を聞き取ったうえで校長から報告書が提出されますので、それによって懲戒免職、停職、減給、戒告などの処分を決めることになります」(同教委の担当者)
Aくんの両親に取材を申し込んだところ、「話すことはありません」などと断られた。