コラボに踏み切った伊香保温泉の大改革
ところが取材中、「情緒があまり感じられない」という、観光客の声が聞こえたのも事実。たしかに古湯の温泉地を期待していた側にすれば、異例の祭りは複雑な気持ちになるのかもしれない──。
「不易流行という言葉があるように、新しいものを取り入れていかなければ廃れてしまいます。アクションがあるからリアクションがある。ダメだったらやめればいいだけ」
そう話すのは、自らも旅館を営む渋川伊香保温泉観光協会・大森隆博会長。伊香保にかつての活気を取り戻すべく、新しい挑戦を展開する仕掛け人でもある。今回の祭りに賛否あるのは承知のうえのようだ。
平成3年の年間172万人をピークに、伊香保温泉を訪れる宿泊客は減少し、現在は年間110万人を割る。そんな観光客の減少に歯止めをかけ、逆に年間180万人を目標にV字回復をすべく改革を進めているのだそう。
「私の宿の予約は6割がWEBからです。つまり若い世代が増える中で、温泉地も変化が求められている。さらに、例えば台湾の方なら、74%がSNSを利用し、うち65%が観光地の写真をアップするというデータが示すように、外国人観光客対策も考えなければいけません。伊香保温泉を訪れる外国人観光客は、全体のわずか2%にすぎない。裏を返せば、まだまだ伸びしろがある」
今回のコラボも若い世代や外国人が関心を抱くきっかけにしたい狙いがあってのことだ。それでも大森会長が「情緒があるところににぎわいを創出」と話すように、めったやたらにペヤングを配置しているわけではない。
たしかに展示は部分的にとどめられ、肝心の石段街エリアや、もっとも古い516年の歴史を持つ旅館をはじめとした情緒ある街並みは保たれている。そして“美肌の湯”のもととされるメタケイ酸や、身体を芯から温める鉄分を多く含んだ優れた泉質は変わることはない。
観光客が求める温泉地の“源泉”はそのままに、それでも“温泉大国”群馬県の観光を活性化させるため、時代に沿った新しいチャレンジをしているのだ。
「伊香保が盛り上がれば、群馬県全体が盛り上がる。そのためであれば、ペヤング以上のこともします(笑)。賛否以前に、無反応、何もしないことほど怖いものはありません。今後も、さまざまなことを仕掛けていこうと思いますので、ぜひ伊香保温泉に来て、体感してみてください」
古めかしいと古くさいは、まったくの別もの。古めかしさを生かすために──。伊香保温泉は、いや、群馬県の温泉地は大きく生まれ変わろうとしている。
営業時間:【混浴】10:00~13:30(水着着用)【通常】14:00~18:00(入場17:30まで)
2月以降の営業日はHPを参照 https://lp.onsen-ouen.jp/ikaho-peyoung/