長期的なキャリアプランを描くべき

 そして女性が自由に選択をするためには、ゆっくりでもいいので、「キャリアを途切れさせないこと」も大切だと考えます。

 私の事務所では、勤続年数に応じて法定を超えて産休・育休を取得できる制度を取り入れています。上限はありますが、勤続1年目では産前・産後合わせて3年間の休暇、勤続3年目では5年間の休暇……といった具合です。現在育休を取っている女性社員の場合は、最長7年間の休暇を取れることになっています。

 復帰後、産休・育休を取っていなかった社員に対して「遅れ」を感じるのでは? という声もあるでしょう。しかし、人生100年時代といわれるように働く期間が長くなっている現在、出世のスピードを急ぐことに大きなメリットはあるでしょうか。

 それよりも、安心して働き、休みを取り、いつでも戻ってこられる職場で長期的なキャリアを継続し、適切な時期にキャリアアップを考える。そういった視点を持つことで、無理なく仕事と生活のバランスを取っていくことができるはずです。

 また、結婚や出産を伴わなくても、プライベートの時間に比率を置きたいという要望を持つ人も増えています。

 弊社でも、入社一年ほどたった社員から「プライベートを重視するために転職を考えている」という相談を受けたことがありました。そこで提案したのが、時短でも正社員としての契約ができる『短時間正社員制度』です。

 契約社員やパートタイムという選択もありますが、将来的に見ると不安が残る働き方になってしまいます。短時間正社員制度なら、仕事の内容や責任はフルタイム正社員と同じ。給与は就業時間に比例し、継続的な雇用も保証されます。

 弊社ではその社員に対し、週3の短時間勤務を提案しました。結果、制度を利用して弊社に残ってくれたこの社員は、今では週3日の勤務時間の中で仕事のスピード・質を上げることを目標に働いてくれています。さらに「この会社で得られることはまだまだある。もっといろいろな分野で経験が積みたい」と言って、意欲的に仕事に取り組んでいます。

 最近は弊社以外でも、もともと会社に制度はなかったものの、勇気をもって相談することで短時間正社員制度が始まったという事例をよく耳にします。ただ、会社が許してくれるからラクをしようという考えだと、将来の自分を苦しめてしまう可能性があるということは考えておかなければいけません。

 自分のペースを把握し、その範囲の中では集中して働いて経験やスキルをしっかりと身に付けていくこと。それがキャリアを継続的につなげていくためには重要な考え方になるはずです。