驚くほど深いディズニーとの縁

ミュージカルの歌は作品の流れがあって、その役の感情があったうえでの歌ですので、感情を伝えるお芝居なんです。コンサートや収録の場合は音楽性と、1曲の間にそこに込められているものを伝えきる、ということを意識して歌っています。

 でもこのアルバムは、僕がいままで出演させていただいたディズニー作品で学んだことを俳優として出したかった

 マイクの前で歌ってはいますが、息遣いや表現の面で、コンサートよりは芝居に近い形で仕上がるといいな、と思いながら収録をしていました」

 海宝さんとディズニーとの縁は、驚くほど深い。

「初舞台が7歳の『美女と野獣』、それから『ライオンキング』のヤングシンバで、俳優としてのスタートは幸せでしたね。実家が千葉にありましたので、ベビーカーに乗せられていたころからディズニーランドへよく行っていて、物心がついたころには生活の中にディズニーが欠かせませんでした

 大人の俳優になってからも『ライオンキング』『アラジン』『ノートルダムの鐘』と縁が続いたことはありがたいですし、ディズニーのレーベルからアルバムを出すことは、ずっと夢でした

 驚きなのは、圧倒的な歌唱力を持つ海宝さんが、特別な音楽教育を受けていないということ。

現場で学んだ感じです。才能というよりは、歌うのがとにかく好きだということが大きいんじゃないかな。それが僕にとってはすべての原動力になりました。例えば『ライオンキング』のときは稽古ピアノの方が素晴らしくて、音符が多い曲のハネ感とかにワクワクして“めっちゃ楽しい!”と思いながら歌っていたことなど、よく覚えています」

 “好きこそものの上手なれ”を実証し、夢を叶えた海宝さんにとって、いまの「I wish. I want.」は?

昨年、ロンドンで舞台に立ちましたが、この1度だけで終わらせたくないんです。ロンドンのミュージカル俳優さんたちが来日した『ヴォイス・オブ・ウエストエンド』を見て、歌声に刺激を受けまして。また海外に出て、こういう方たちと共演できるような俳優になりたいと、強く思いました

 もちろんハードルは高いと思いますが、もっと自分をブラッシュアップして、絶対に実現したいですね

ミュージカル『イブ・サンローラン』
ミュージカル『イブ・サンローラン』
■ミュージカル『イヴ・サンローラン』
 ファッションの世界で美を究め、“モードの帝王”と呼ばれたデザイナー、イヴ・サンローラン。その偉大な功績と人生の光と影を、音楽に彩られたつかの間の幻として浮かび上がらせるミュージカル。作・演出:荻田浩一、音楽:斉藤恒芳。2月15日~3月3日 よみうり大手町ホール、3月26日 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで上演。詳しい情報は公式ホームページへ(https://www.yume-monsho.com)。

PROFILE
かいほう・なおと◎1988年7月4日、千葉県生まれ。7歳のとき『美女と野獣』のチップ役でデビュー。’99年には『ライオンキング』のヤングシンバ役に抜擢され、3年間務めた。近年は『レ・ミゼラブル』、『アラジン』、『ノートルダムの鐘』、『ジャージー・ボーイズ』など、ミュージカルを中心に幅広く活躍。2018年にはオペラショー『TRIOPERAS』でロンドンデビューも果たした。また、コンサートやロックバンド「シアノタイプ」などでボーカリストとしても活動中。4月からは『レ・ミゼラブル』で3度目のマリウス役に挑む。

(取材・文/若林ゆり)