そんなお金、今すぐ用意できるわけないだろう

 そう斎藤が言うと、男は徐々に金額を下げていき、最終的に100万円に。「お金は代理で弁護士が受け取りに行く」と言われ、電話は切れた。

 その日、妻と2人で銀行に行き、100万円を引き出すと、妻がそのお金を持って、犯人が指定した場所に赴いた。

 お金を引き出すにあたって、

「まとまったお金は銀行の窓口だと、銀行員に使い道を聞かれて下ろせない」

 と、男はATMで引き出すように示唆したが、妻は、「その金額ならATMで大丈夫よ」と、相手を安心させるように言ったという。

 受け渡し場所として、犯人が最初に指定したのは、都内私鉄の某駅。妻が駅に着くと、男から連絡が入り、そこから移動するように指示され、向かった場所は公園だった。

 現れた“代理人”は、「○○法律事務所の××」と名乗り、スーツにコート姿。代理人は妻と会っている間、息子を装った電話の男とずっとケータイで通話中。妻が名刺を要求すると、通話中のケータイを渡してきた。息子を名乗る電話口の男は、

お願いだから信じてよ。時間がないんだから早く渡して

 と、急かしてきたため、お金を渡してしまった。2日後、本物の次男から電話があり、詐欺に気づいたが、後の祭り。

 実は、斎藤は数年前にも、オレオレ詐欺の未遂にあっていた。そのときは、犯人は長男を装って電話をかけてきたという。会社の車を運転していて事故を起こしてしまい、車を修理しなければならないので、修理代を貸してくれということだった。指定された口座に振り込もうとした矢先、長男から電話が入り、事なきを得た。今回は、どうして騙されてしまったのか。