テレビは残り続ける
テレビが衰退した主な理由にインターネットがよく挙げられる。だが、番組=コンテンツの質、おもしろさという点で、土屋さんの見方は異なるようだ。
「なぜネット系コンテンツのクオリティーが上がってこないのか、ずっと不思議だったんです。それは彼らが“ビジネス”を優先するからだと思うに至った。広告収入を得るため、再生数を上げるテクニックに走り、おもしろさよりもビジネスが先に来ちゃう。
テレビが幸運だったのは、ネットと違い制作と営業の現場が別だから、ビジネス的なものを考えずおもしろいものがつくれること。今後、テクノロジーがさらに進化して、AIや機械にコントロールされる時代が来るかもしれませんが、人の喜怒哀楽はなくならない。感動したり、笑ったりするためにコンテンツはずっと必要だと思うし、そういう意味でもテレビは残り続けると思います」
そんな土屋さんに、平成でいちばん記憶に残っていることを質問すると、
「カウントダウンを2分間違えたの、ですかねぇ」
と苦笑い。これは’00年(平成12年)から’01年(同13年)にかけて放送された年越し番組『いけ年こい年』での出来事。意図的に時間を2分早めてカウントダウン、年越しのタイミングを間違える演出で、批判が殺到した。
「あれはやっていいことか悪いことなのか、今でもわからないっていうか……。でもね、この番組を見てくれた人たちだけは、21世紀に入った瞬間を覚えているわけですよ。この“テレビが時間を間違えるギャグ”をやるために数年前から年越し番組を担当しました。そうやって僕はクビをかけた(笑)。
平成が終わって、次の元号が始まる瞬間にも、視聴者が何をしていたのかをテレビが刻めるだろうか? そのときに“平成を振り返る?”なんてことしかやっていないんじゃあ、この先、テレビの未来は暗いかも(笑)」
《PROFILE》
土屋敏男さん ◎日本テレビ放送網日テレラボシニアクリエイター。演出、プロデュース番組として『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』などを手がける。