狙うべき視聴者は50代以上
その後の音楽シーンは多様化の一途をたどる。宇多田ヒカルなど実力派アーティストの出現、日本語ラップやテクノポップのリバイバルなど、ファンもジャンルも細分化していく。そのため、近年は歌番組の特番化が顕著に。
「幅広い層へ訴求できる音楽番組をつくるには、季節ごとの特番でないと成立しない。今うまくやっているのはNHK。『うたコン』は50代以上、若者向けの『シブヤノオト』、幅広い世代が見る上質な『SONGS』と全方位的な番組づくりをしています」
一方、民放の地上波放送は、若者向けに広告を出したいというスポンサーの意向があり、新たな音楽番組はつくりづらい状況に。
「視聴者が高齢化しているため若者向けの番組はつくりづらい。歌番組は現在、BS放送に移っています。今、求められているのは、人口が多く、気に入った曲のCDを買う50代以上を狙った上質な音楽が楽しめる番組。あらためて時代のニーズをとらえることが、これからの音楽番組に必要なことなんだと思います」
《PROFILE》
富澤一誠さん ◎1951年生まれ。東京大学を中退し、音楽評論家として活躍。現在、尚美学園大学の副学長も務めている。