“冬彦ブーム”を報じる記事('92年)
“冬彦ブーム”を報じる記事('92年)
【写真】冬彦さんは何位?平成の高視聴率ドラマTOP30

 社会現象を巻き起こしながら、最終回では視聴率34・1%をマーク。続編『誰にも言えない』('93年)の制作が決まった。

あれだけ冬彦のイメージがついちゃうと、賀来さんとの共演はもう一生ないだろうと思っていました。“年をとってから、また会えたらいいね”なんて話してたんですよ。でも、すべての撮影が終わったときに、“間にコメディーを挟んで、第2弾をやりましょう”と」

制約が増えるほどチャンスだ

 こちらも大ヒット。強烈な印象を刻みつけた。放送から27年。いまだに冬彦の話をふられることに辟易としないのだろうか?

「あはははは(笑)。それもなくはないけど、師匠の唐十郎さんには“役者なんてのは、一生に1度、ハマリ役に出会えるかどうかだ”と、20代のときにさんざん言われてましたからね。そのありがたさは今でも感じています」

 平成を振り返ると、

「機材の変化は大きい。機材が進化して便利になり、事前にリハーサルの時間を取ることがほとんどなくなりました」

 と言うが、一方で表現に対しては、厳しい眼差しを向けられる時代になった。

「制約が増えれば増えるほどチャンスだとも思っています。言葉に制約があるなら、気配を大切にすればいい。“愛してる”と言ってるけど、前後の文脈から考えると“殺してやる”と思いながら言うセリフもある。こんな時代だからこそ、説明ではなく気配を感じ取る感性が大切になってくると思います


佐野史郎 ◎さのしろう '55年生まれ。'75年劇団『シェイクスピア・シアター』の創設に参加。唐十郎主宰の『状況劇場』を経て、俳優、文筆家、ミュージシャンとして多方面で活躍中

*タイトルと本文に「賀来千賀子」とありましたが、正しくは「賀来千香子」でした。訂正して、お詫び申し上げます(2019年3月23日14時10分修正)。