母親として、家族を守るために“離婚”という選択肢はなかったのだろう。また、也哉子の長男でモデルのUTAがまだ幼いころ、この店に連れて来られたときにはこんなことがあったという。
「希林さんに“お孫さんは、父親の本木雅弘さんに似ていますね”と伝えたら、“違う、違う! UTAは裕也さんの若いころにそっくりなの!”と、いくら言っても意見を曲げないんです。どう見ても、モックンそのものなのに(笑)。希林さんの女性としてのかわいらしさを感じました」
夫の仕事に対しても共感する部分が大きかったようだ。
裕也さんは、年越しオールナイトイベント『NEW YEARS WORLD ROCK FESTIVAL』(以下、ロックフェス)を46回にもわたりプロデュースしていた。希林さんと30年以上の親交があった西麻布でブティック『PRESS601』を経営する遠藤勝義さんによると、
「数年前、希林さんが裕也さんを店に連れてきたことがありました。いま考えると失礼な話なのですが、彼に“ロックフェスを見たけど、私には怒鳴っているだけで理解できない”と伝えたんです。すると、彼は“あれは世に出られない人を育ててあげているの、そう思って見てあげて”と穏やかに答えてくれました」
希林さんは、浅田美代子に毎回“芝居が下手クソ”と叱咤しつつ、浅田主演で6月公開の映画『エリカ38』をプロデュース。浅田以外の後輩女優たちにも演技のアドバイスをすることが多かったという。
「あぁ、希林さんも同じようなことを言っていたなと。ロックと役者という舞台は違えども、この人たちは同志なんだなと思いました」(遠藤さん)
「戸籍は大事よ」
このロックフェスに参加しているバンド『カブキロックス』の氏神一番も、こう話す。
「'16年のロックフェスに希林さんが初めて来たんです。でも、彼女が姿を見せたのはこの1度だけでした。僕が結婚することを報告すると、“戸籍は大事よ”と言われました。そのときはピンとこなかったけど、今になって希林さんが言いたかったことがわかりましたね」
裕也さんはロックンローラーのプライドがすごく高かった、と氏神。
「収入はなくても、飲み屋では高い酒を頼む。会見はいつも帝国ホテルを借りて行う。そういったお金も含めて、生活費のほとんどは希林さんが出していたようです」