「最後にこのユニフォームを着て、この日を迎えられたことをたいへん幸せに感じています」
3月21日、数々の金字塔を打ち立ててきたシアトル・マリナーズのイチローが、28年間の現役生活を終え、ついにバットを置いた。
“球界のレジェンド”を内助の功で20年、支え続けてきたのは、元TBSアナウンサーで8歳年上の弓子夫人だ。
「引退会見では、ホームでの試合前に必ず食べるおにぎりを欠かさず作ってくれていた弓子夫人に対して、感謝の言葉を口にしていましたよ」(スポーツ紙記者)
それもそのはず、弓子夫人の献身的なサポートは周囲も舌を巻くほどだったそう。
「結婚前は野菜がほとんど食べられないイチローのために、野菜を細かく切り刻み、カレーやピラフに入れるなどの工夫を凝らしたり、神戸にある彼の行きつけのレストランで味つけの好みやレシピも教わっていました。シーズン中には足裏マッサージもしてあげて、完璧な“アスリート妻”だったんです」(同・スポーツ紙記者)
妻と二人三脚で築き上げてきた“イチロー伝説”なのだが、早くも気になるのは引退後の進路について。
会見では「監督は絶対に無理ですよ」と答えているが、今後、指導者としての道はあるのだろうか。
選手の受け皿としての期待
スポーツライターの小林信也さんに話を聞いた。
「指導者になるかどうかについては、今はまだ考えていないと思いますよ。例えば、会見で“草野球のような野球をやってみたい”という発言がありましたが、実践してもらえたらうれしいですよね。
というのも、今の日本球界というのは、上に昇りつめるコースしかないのです。甲子園を目指す高校球児はあれだけ野球に打ち込んでいるのに高校3年の夏大会で敗退した途端、野球をいっさいやらなくなったり、一部の選手だけが大学で野球を続ける程度。高校を機に、一気に野球人口が減るのが現状です」
「最近はやっと独立リーグが発足し、退団したプロ選手の受け皿ができましたが、どこかで壁にぶつかると、野球を続けられる環境がなくなることが多い。
例えば、新しい試みとして“イチローカップ”のような大会や“イチローベースボールクラブ”のような団体など、選手の受け皿を作ってもらえると素敵だなと思います。会見での“草野球発言”を聞いて、新しい可能性を感じましたし、監督などではなく、イチロー選手だからできる革命を起こしてほしいですね。彼の引退は終わりではなく、むしろ始まりだと感じさせてくれる記者会見でした」(小林さん)
“イチロー伝説”は、きっとまだ続くはず─。