完成したギターは、クラシック音楽が流れるこの保管室に。種類の多さに驚かされる
完成したギターは、クラシック音楽が流れるこの保管室に。種類の多さに驚かされる
【写真】ズラリと並ぶギターの多さにビックリ!

 ヤイリギターを世界的なギターメーカーにしたのは、'14年に81歳で亡くなった先代の矢入一男さんだ。

「先代は、“使ってもらうことに何の縛りもない。こちらにもメリットがあるから”と言ってました。実際、ミュージシャンの方からのアイデアで勉強することも多いんです」

「うちでは誰も辞めない」

ポールからも写真が届いた
ポールからも写真が届いた

 現・代表取締役の矢入賀光社長に、工場内を案内してもらった。

「木材は樹齢200年のスプルースという木を使っています。御神木みたいな木ですから使わせてもらっているという感じですかね」(矢入社長、以下同)

 さまざまな工程を経てだんだんギターの形になっていくのがおもしろい。それにしても種類の多さに圧倒される。

 完成したギター専用の部屋ではクラシック音楽が流れている。

工場内では工程に分かれて作業が進められている。木材は十分に乾燥させたスプルース
工場内では工程に分かれて作業が進められている。木材は十分に乾燥させたスプルース

「振動を楽器に与えてやることで、楽器も振動しやすくなる、ということで当社では昔からの伝統です。実証実験をしたわけではありませんがね」

 現在、ヤイリギターで働く従業員は35人。地元で採用された人が多いと思いきや、全国からギター作りに憧れてやってきた人ばかりだという。

「労務士さんにほめられるんですが、うちでは誰も辞めないんです。好きでやってますからね。職人の空きを待ってくれている子もいるんですよ」

 ギターを愛する人たちのためにギター作りを愛する職人が作る─なんとも幸せな関係ではないだろうか。