アプリでの婚活事情
婚活の場をパーティーからアプリに切り替えたのは、杉並区在住で不動産関連会社の浅野雅美さん(36)だ。
「結婚相談所に比べればパーティーは手軽ですが、時間とお金、労力を考えるとうんざりです。10回ほど参加しましたが、婚活アプリに切り替えました。いろんなアプリがあって、相手にメッセージを送るには課金が必要なものもあるんですが、私は女性が無料のアプリを使っています。もちろん、婚活パーティーよりも身体目的の男性は多いかもしれませんが、婚活パーティーより相手の幅も広い。だから、そこを女性が慎重に見極めるしかないんですよ」
眼力が試されるという。アプリの登録の際、写真やプロフィールは盛ったものが多いと考えておく。女性は顔写真やその髪型を写真修正アプリで盛ったりするが、男性は顔出しせず動物や植物の写真でごまかすという。自分の年収もかなり上に設定している。
「婚活パーティーでもアプリでも感じるのですが、最近は女性の学歴を重視する男性が増えてきているんですね。つまり、高収入のエリート男性以外は、共働きじゃないといい暮らしができない時代になってきているかなと」
平成ジャンプと呼ばれることには抵抗がある。
「女は男と違って、恋愛にはいつも真剣なんです。一部の例外を除くと、結婚を前提としたお付き合いしか考えられないんですよ。それを茶化すような言葉じゃないですか。許せないですよ!」
浅野さんはいま、婚活アプリで出会った2人目の男性と正式な恋愛を始めるかどうか思案中だという。
同じく婚活アプリを1年前に始めたのが千葉県柏市在住の私立高教師・大坪讓治さん(31)である。
「平成ジャンプは初めて聞いたとき、ドキッとしましたね。うちは両親とも20代で結婚して、20代のうちにボクが生まれています。両親も母方の祖父母も仲がいい。祖父母宅にいとこが集まるとき、家庭の温かみをしみじみ感じるんです。だから早く結婚したいと思っていた。ずっと以前から、34歳までには仕事も家庭もちゃんとしていたいなということが頭にあって」
大坪さんはアプリにのめり込んでいるわけではない。仕事が忙しいときは婚活せず、費用は最高で月4000円程度。2人の女性とマッチングして実際に会った。
「でも、思っていたのとイメージが違っていて、また会おうという気にはならなかった。もともとボクは恋愛下手なところがあって、彼女がいたことはありますが、長く続かないんです」
両親に対して「いい結婚相手を紹介してよ」と、しきりにお願いしているという。
「妹が2人とも美人で、いとこ2人も美人なんですね。ですから、みんなで集まったときに遜色のないぐらいの女性がいいですね」
相当にハードルが高い。しかし、大坪さんはイケメンだから決して不釣り合いではない。外見以外で、女性に求めるものは何か。
「父が九州出身なので亭主関白なんですね。母はそれに従って、夫を立てる感じ。そういう環境で育っているので、しゃしゃり出たり、男にダメ出しする女性は苦手です。職場の女性教師は気が強い人が多いので、ケンカになりそうです」
さて、縁結びで有名な都内のパワースポットに足を運んだ。大勢の男女が訪れ、2日間粘って取材のお願いをしたが、話をしてくれたのは女性2人連れだけ。いかに婚活がナイーブな問題かということを再認識させられた。
その2人はいずれも「離婚歴あり」だったため、平成ジャンプではなかった。2人とも40代のシングルマザーで「入籍は別として、将来、一緒に過ごすパートナーは欲しい」と口をそろえた。
実は筆者も平成ジャンプのひとり。結婚がすべてではないと思っているが、仲のいい夫婦やカップルを見て温かい気持ちになることも。自分のことはともかく取材に応じてくれた婚活中の男女が幸せをつかむことを切に願う。
やまさき・のぶあき 1959年、佐賀県生まれ。大学卒業後、業界新聞社、編集プロダクションなどを経て、'94年からフリーライター。事件・事故取材を中心にスポーツ、芸能、動物虐待などさまざまな分野で執筆している