急いで向かった先は、駅内のそば屋さん『三陸リアス亭』。店頭販売は1日20個限定だが、電話予約ができるというのはちょっとした裏技。ここのうに弁当は、ウニの煮汁で炊いたごはんの上に、三陸産の蒸しウニをびっしりと敷き詰めてある。
「ごはんをお父さんに詰めてもらって、私ともう1人でウニをのせているの。手作りだから数も限られちゃう」
こう話すのは夏ばっぱのモデルにもなった工藤クニエさん(79)。夫・清雄さんと、1984年に三陸鉄道が開通した当時から守り続けてきた味。夏ばっぱにも会え、おいしいウニとともに『あまちゃん』の世界を堪能できる、この場所はロケ地巡りではずせません。
切なさ全開の神シーンの舞台へ
翌朝、ドラマでも名シーンが山盛りで“走る聖地”とも呼ぶことができる『北三陸鉄道』(北鉄)こと三陸鉄道に乗って『あまちゃん』ゆかりの地を目指す。撮影当時、ロケ隊にも同行して現場を見続けていたという三陸鉄道旅客営業部長の橋上和司さんは、
「3月23日の全線開通は、震災復興のシンボルだけにメディアも40社100人が殺到。電車通学が夢だった女の子が高校を卒業したにもかかわらず制服姿で乗ってくるなど、ドラマのようなことがありました」
と、目を細める。
久慈を出て最初に降り立ったのは、袖が浜の最寄り駅『袖が浜駅』として『あまちゃん』に登場する堀内駅。
ヒロイン・アキの親友ユイちゃん(橋本愛)が、
「アイドルになりた〜い!」
と駅のホームから叫ぶシーンで有名になった駅だ。しかも、ここから今でも語り継がれる名場面の舞台は目と鼻の先。その名場面とは、みんなの反対を押し切り、アイドルを目指して上京する春子(小泉今日子)を乗せた『北鉄』が、大沢橋梁に差しかかる。
するとそこには、浜で大漁旗を振って見送る夏ばっぱの姿が! ところが、春子は後ろを向いたまま、夏ばっぱに気づかない─。