「家族でないと、できない問題ってあるんです。うまくは言えませんが。私は命じられたことをやっているだけ。守りたいというのは、仲代さん自身を、です」
仲代の人生を妨害してくる人物でもいるのだろうか?
「人から守りたいのではない。尊厳を守るためです。これ以上は他言しないように言われていますので……」
そう言うとYは仲代が入っていった家の中へ姿を消した。
はたして、養子縁組しなければできないこととは?
「入院の手続きに関しては、必ずしも子どもである必要はありません」と『弁護士法人・響』の坂口香澄弁護士。
「治療をする中で、リスクの高い手術や延命治療をするかなど命に関わる決定は本来、本人にしか決められません。本人が決定できない場合の決定方法についての法律は未整備です。
臨床では家族に決定を委ねているので、仲代さんが希望する治療を病院にしてもらうという意味では、そばに家族がいることは仲代さんのためにもなると思いますし、養子縁組に意味はあると思います。ただし、子どもでなければならないと法律で決まっているわけではありません。一般的な法律行為についても、家族でなければということはないですね」(坂口弁護士)
もう1人の養女である奈緒に話を聞こうとしたが、あいにく海外滞在中で、本人と連絡をとることができなかった。
高倉さんの親族は、いまだに養女とは会えず、弁護士を通してくれと言われているという。仲代は、わだかまりのない円満な“終活”を描いているのだろう。