孫娘と妻、W介護の生活
別の飲食店のオーナーは、夫婦で介護に取り組んでいた場面を目撃していた。
「お孫さんはデイサービスに通っていました。バスで迎えに来るんですが、以前は送り迎えを夫婦交代でやってるのを見かけました。暑い日も寒い日も車いすを押して歩いている姿は、今も覚えています」
孫娘のサポートも、奥さんが認知症になったことで、2人の面倒を見ることが辰巳容疑者の肩にのしかかってきた。
容疑者と同じ集合住宅に住む女性住人は、
「たまに自宅ではない家の前に座り込んだりしている奥さんの姿を見かけたことはありましたね」
と明かし、奥さんの顔には人に殴られたようなアザがあった、と続ける。
「顔のアザに関しては、障害のある孫娘さんが暴れるから、と聞いていました。1年くらい前からですかね、アザが目立つようになったのは。今月上旬、奥さんを見かけましたが、両目の周りが真っ黒で、まるでパンダのようなアザがついていました。
(集合住宅の)エレベーターの近くに座り込んでいるところに旦那さんが来て、“おかあちゃん、家に帰ろう”ってやりとりを見ましたね。以前も、他人の家の前に座り込んでいる奥さんを“家に帰るよ”って連れて帰ろうとするところを見ましたが、奥さんは“嫌だ、帰りたくない”って言っていましたね」
奥さんの認知症はひどくなり、周囲に辰巳容疑者は「病院に入れたいんだけど、なかなか入ることができない」と漏らしていた。
そんなW介護の暮らしの中で、辰巳容疑者の心の支えは孫娘だったようで、
「お酒を飲むと毎回言っていましたよ。“孫は宝物だよ”って」(前出・スナックの女性店主)
「孫に対しては愛情あふれることばかり言っていましたよ。昔、成人式で着物を着せてあげたらしいんだけど、その姿が本当に可愛いんだって」(前出・居酒屋オーナー)
献身する辰巳容疑者だったが、自分も体調を崩した。
「昨年、入院していると思います。確か脳梗塞で1週間くらい。小さい身体でガリガリ。確か38キロって言ってましたね。お酒を飲んだら、何も食べないので、医者からはお酒もやめたほうがいいって。辰巳さんが飲み歩くようになったのは70歳を過ぎてからと言ってました」(前出・スナックの女性店主)
3度の食事と排泄と介護に買い物を一手に引き受けていた辰巳容疑者。「ご飯の支度をしてくれなかった」という供述は、「ご飯の支度をしてほしかった」という願望の裏返しなのかもしれない。