暴力以外は虐待ではないと思っている
水飲み用のボウルの底にたまったヘドロから、小さな謎の赤い虫がうじゃうじゃ出てきたこともあったという。
エサは腐り、飲み水は乾いているか、濁ってドブのようなにおいがするかのどちらか。熱中症や脱水症状で衰弱して死んでいく犬・猫もいた。
「ほとんどの動物はカビが原因の皮膚病や感染症にかかっていました。Aさんは自分のお気に入りの子はすぐに病院に連れていくのに、それ以外は放置する。2か月で19匹が死んだこともあったそうです。死んだ猫がタンスの引き出しから出てきたり、真っ黒な塊があったので“うんちかな”と思ったら猫の死体だったことも……」
命を救うための愛護団体なのに、むしろ命を軽視しているようにしか思えない。
「ただ、Aさんは動物を本当にかわいいと思っているようでした。自分のことを“パパさん”と呼んで、お気に入りの子はいつも車でどこかに連れていっていました。施設がこんな状態なのに“ここにいる子は本当に幸せだよね”と本気で言っていました」
動物を叩いたり、蹴ったり、直接的な暴力をふるうことはなかった。
「暴力以外は虐待に当たらないと思っているようです」
警察に相談したこともあったが、「不衛生というだけでは罪にならない」と取り合ってもらえなかったという。
「施設は廃業させ、Aさんには今後一切、動物と関わってほしくありません!」
関係者は取材中、何度も目に涙を浮かべてかわいそうな犬や猫の救出を訴えた。
A氏は告発をどのように受け止めているのか。
施設で本人を直撃すると、
「今日は忙しい。手が離せない。来る前に電話ください」
翌5月23日、再び施設を訪ねると、県警が捜査に入っていた。施設の中からケージに入れられた犬や猫が次々に運び出され、A氏は警察車両に先導されて施設を後にした。
前出・杉本さんは、
「自分が引き受けた命は、最後まで責任を持ってほしい。今回の動物愛護法改正で動物虐待の罰則が引き上げられたら今後は厳正に処罰されるでしょう。動物は声をあげることができません。気づいた人が声をあげなかったらそこにいる動物は助けられません。勇気を出してみんなで声をあげ、動物を救える社会にしたい」
A氏が歪んだ愛情に気づく日はくるだろうか。