5人が6畳に押し込められ……
そして'17 年11月2日、2か月ごとの仮放免更新のために東京入管を訪れると、職員から「更新が不許可となったので収容します」と告げられ、数秒後、10人ほどの職員がウチャルさんの全身を確保し、床に組み伏せた。そして、再び牛久入管で'18年7月6日まで収容されることになる。
この8か月はきつかった。面会に来るまゆみさんの手に触れることはできず、面会は30分だけ。1日数時間の自由時間以外は、5人の外国人が6畳の部屋に押し込められ施錠をされる。外出の自由はない。景色も見えない。
多くの人が、その閉塞感と明日が見えない不安から睡眠薬や精神安定剤を服用するが、私は牛久入管での面会取材でいくつもの拘禁反応を見聞きした。視線が合わない。口が開きっぱなし。身体を洗わない……。
取材中、ウチャルさんは「実は毎日、寝る直前まで外で過ごすんです」と吐露した。四方を壁に囲まれると収容の苦しさがフラッシュバックするのだ。まゆみさんも「仮放免更新のため彼と入管に行くと、怖くて涙が出てくる」と打ち明けた。夫妻は今年3月から心療内科に通い、心の安寧を取り戻そうとしている。
ウチャルさんがこれまで4回申請した難民申請はすべて不許可。そして法務大臣の裁量で特別に在留できる「在留特別許可」も、昨年末に不許可。ウチャルさんは5月10日、不許可撤回を求める裁判を起こすことを決めた。
人権哲学なき日本の入管。ある被収容者の言葉は入管問題の本質をついている。
「犯罪ならば刑務所での服役期間があらかじめ決まる。でも難民申請しただけの私たちが、なぜ3年も4年も収容されるのか」
この記事を機に、1人でも多くの読者がこの問題に関心を寄せることを願う。
(取材・文/樫田秀樹)
《PROFILE》
樫田 秀樹 ◎ジャーナリスト。'89年より執筆活動を開始。国内外の社会問題について精力的に取材を続けている。『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社)が第58回日本ジャーナリスト会議賞を受賞
《INFORMATION》
ダヌカさんの第1回口頭弁論は5月31日10時半~、東京地裁803号室。近況はツイッター『ぶるーの(ダヌカさんを支援する会)』を参照。アカウントは@gurifon5