《希林さん、そりゃあ半端じゃないよね。もろいところもあるんだろうけど、でもやっぱりスゴイよな。子供を育てて、家建ててさ、ブレないで仕事してんじゃない。(中略)あとは病気ね、あれが全治して欲しいなって思ってるよ》(『俺は最低な奴さ』白夜書房2009年11月)
妻の樹木さんには身勝手な言い方もする一方で、愛娘の也哉子さんには率直な思いを吐露している。
《いつも考えるのは娘のことだねえ。俺もやっぱり人の親だなって、つくづく思うよ。(中略)子どもにはデレデレした甘い感情と、親父としてしっかりしなくちゃいかんぞっていう気持ちと、二つの愛情を感じるんだ。(中略)父親の感情って複雑だよ。とにかくホットな女に育ってほしいよ》(「妻・悠木千帆か愛人か─近いうちにハッキリさせる!」週刊女性1977年2月8日号)
そして、娘が結婚する経緯は、強面ロッカーとは思えない狼狽ぶりがほほえましい。
《本木(雅弘)と也哉子のこと、あれはぶっ飛んだよ、俺も。(中略)ああいうポップスター、まだガキだ、この野郎みたいに思ってたから、やっぱりさ、ウーンって感じで。だいぶ経ってから、まあちょっとつうんで、“婚約をするけど”って、全部事後報告だ。“こ、こ、婚約を”って吃っちゃったよぉ》(『俺は最低な奴さ』白夜書房2009年11月)
《家族の絆なんて考えてる余裕もなかったしね。子供が1人いてよかったと思いますけど。どう対処していいのか、いまだにわからない》(「いつも『あの野郎!』と思っていきているんです」女性自身1998年4月28日号)
《親っていうのは、権威とか、イばるとかじゃなくてね。(中略)親と子の断絶とか、なんとかじゃなくて、いい関係であれば、それでいいわけよ》(『俺はロッキンローラー』講談社1976年8月)
亡き父について也哉子さんは、葬儀での喪主挨拶で、
「世の中の矛盾をすべて表しているのが内田裕也ということが根本にあるように思えます。私の知りうる裕也は、いつ噴火するかわからない火山であり、それと同時に、溶岩の狭間で物ともせずに咲いた野花のように、清々しく無垢な存在でもありました」と表し、「Fuckin'Yuya Uchida, don't rest in peace just Rock'n Roll!!!(内田裕也のくそったれ。やすらかに眠るな!)」と哀悼した。
内田さんのロックンロールな軌跡と家族愛が、歯に衣着せぬ物言いやメッセージが詰まった“裕也本”で垣間見ることができる。