完全なひきこもりではなく、他者との会話もできて、近所のスーパーに買い物も行き、趣味のコンサートにも行っていたという高橋容疑者。
「そうそう、確か『仮面女子』だったと思うよ。アイドルのコンサートには行っていたらしいですね」
前出・自治会関係者はそう証言する。
「息子のほうは、よく自転車に乗って出かける姿は見かけましたけど」(前出・男性住人)
その一方で、
「お宅を訪問しても、なかなか会えない状態が続いていました。就労に向けたセミナーへの参加を働きかけましたが、応えてもらえませんでした」(前出・市職員)
と勤労意欲はまったく見せず、親の年金頼みの暮らし。
自治会費の度重なる未払いはなく、ご近所トラブルもないが、妙なことを言われたことがあるんですよ、と前出の男性住人が記憶していた。
「私が引っ越してきたときの話です。洗濯用洗剤を買って、自治会長と両隣に挨拶を兼ねてうかがったんです。そのときにたまたま、息子(=容疑者)に会ったんですが“全部の階の人に挨拶しないとな?”と言われたんです。5階建ての集合住宅の全戸に挨拶する人はいませんよ。初対面なのに、ちょっと変なことを言う人だなと思いました。常識が、ちょっとずれているかもしれませんね」
遺体に外傷はなく、病死の線が濃厚。罪を償う容疑者を待つのは、社会復帰だ。
「国立市に居住されることが前提になりますけど、必要な支援をやっていきたいと思っています。お父さまの年金もストップしてしまうのですから、ますます困窮されるでしょうね。相談があれば、生活保護も含めて対応し就労支援もやっていきたいと考えております」(前出・市職員)
“8050問題”の当事者は、いずれ頼りの親を亡くす現実に直面する。早めに手を打たないと、同様の事件の再発は防げない。
取材・文/フリーライター山嵜信明と週刊女性取材班
山嵜信明(やまさき・のぶあき)フリーライター 1959年、佐賀県生まれ。大学卒業後、業界新聞社、編集プロダクションなどを経て、'94年からフリーライター。事件・事故取材を中心にスポーツ、芸能、動物虐待などさまざまな分野で執筆している