その後、男である、結婚している、子どもがいる、戌年(いぬどし)、新婚旅行はハワイに行った、競馬が趣味、などなど少しずつプライベートを公表してきました。これは、スタート時点で設定を“謎”にしていたのが大当たりで、そのときどきの社会的話題に便乗し、後づけの展開ができるので、まさに戦略勝ちといえるでしょう。
『謎の魚』はマスコミからの注目も集め、新聞、テレビなどで取り扱われ、話題性を確保しました。
「正直なところ、最初はマスメディアからよい反応はもらえず、取り上げられる機会も少なかったのですが、ファンによって動画が拡散され、それも海外まで広がると一気に価値が高まり、対応も一転しました。
現在、Twitterフォロワー数は4万7000、デビュー直後の動画再生回数は2017年が80万6321回、2019年は10万回くらいです」(ロッテ球団広報)
ここまで成長した『謎の魚』について、若くしてチームキャプテンを務めていた鈴木大地選手は、どう思っているのだろうか。
「デビューした2017年、最初はなんだろう? 程度しか思っていませんでしたが、周囲の人がこのキャラクターの話題をするようになって、そんなに話題になっているんだと思いました。
驚いたのは、やはり今まで野球の話などしなかった人たちもこの謎の魚を知っていたことでした。それだけ広く受け入れられるキャラクター設定なのだろうなあと思います。今後、どのような展開になって話題になるか注目をしています」
と、目を輝かせる。
『謎の魚』の人気にあやかり、関連グッズは70点以上、販売。
2017年から2018年前半にかけて、ロッテマリーンズグッズの売り上げ1位に輝き、『謎の魚』グッズは全体の10%以上の売り上げを占めるそうです。
最後に裏話、そして今年の活動について広報に聞いてみました。
「設定上の裏話がひとつあります。第1形態、第2形態、第3形態、そして東京湾木更津付近で生まれ、上陸してから1度、海に戻り、また再上陸するという設定は、映画『シン・ゴジラ』をヒントにしています。たまたま子どもと映画を見ているときに思いつきました(笑)」
これには気づいたファンの方も多く、SNS上で「それってシン・ゴジラだ!」と議論が起こり、マスコミが取り上げたそうですが、まさに狙いどおりの展開! 考えてみると謎の魚の成功は、まさにSNSが影響力を持つ現代社会を反映したキャラクターを生み出した成果といえるでしょう。。
そして、今年、さらには2020年オリンピックイヤーに向けて、
「今年は小休止をして来年2020年にまた大きく展開をする予定をしています。このような企画はいつも攻めていては飽きられます。ですので今年はあえて引きぎみに活動をさせています。まだ2020年にどのような展開をするかはお伝えできませんが、周囲の予想と逆をいく天邪鬼(あまのじゃく)精神にあふれる、魚のさらなる魅力を作れるようにがんばりますので期待してください」
世界遺産のひとつである京都・東寺にある五重塔。その初層階の4隅の軒下に小さな4体の天邪鬼がいます。諸説ありますが、ひねくれている性格のため、お釈迦様が罰としてそこに封じ込め、五重塔を支える役目を与えたといいます。
まさに『謎の魚』もロッテマリーンズという大きな屋台骨を陰で支える大役をつかさどっている存在だと思いました。
がんばれ謎の魚!!!
北岡哲子(きたおか・てつこ)日本文理大学特任教授 感情・表情・脳と癒しをテーマにする「癒し工学」の創始者。工学博士であり、心の科学者。社会人1年目でヘッドハンティングされ、外資系のベンチャーへ移籍し経営のノウハウを学び、25歳で起業し女性200人を擁する人材派遣の会社を設立。結婚を機に仕事を完全に辞め専業主婦になる。育児が一段落してから独学で心理学を、さらに研究所・大学院でカウンセリング・臨床心理学を学び、2007年東京工業大学で工学を学ぶ機会を得て、同大において2009年に学位(工学博士)を取得、同時に助教に就任。著書に『「癒し」は科学で手に入る』(幻冬舎ルネッサンス新書)、『スポーツをテクノロジーする トップアスリートの記録を引き出した技術の力』(日経BP社)。