英語力が高く、アメリカ文化にも通じているゆりやんさんは、アメリカでウケる笑いがどういうものであるかというポイントをきちんと押さえていて、そこに適応していました。単なる英語力だけでなく、アメリカ文化への理解力と笑いの能力を備えていたからこそ、あれだけ見事なパフォーマンスができたのだと思います。

「トップクラスの実力」持つ女芸人

 ゆりやんさんは、吉本興業のお笑い養成所「NSC大阪」を主席で卒業したエリート芸人です。デビュー当初から頭角を現していて、2015年には芸歴わずか3年目でピン芸日本一を決める「R-1ぐらんぷり」の決勝に進みました。

 その後も数多くのバラエティー番組に出演して、2017年にはついに「女芸人No.1決定戦 THE W」(日本テレビ系)で優勝。名実ともに女芸人のトップに上り詰めました。

 2017年に放送された「女芸人No.1決定戦 THE W」の中で、ゆりやんさんの推薦人としてVTR出演していたレイザーラモンRGさんが、彼女のことを「バケモン」と表現していました。「トークで笑いが取れるうえに、0から1を生み出すこともできる」と、芸人として最大級の賛辞を送っていました。

 ここで言う「トーク」とは、バラエティー番組で何かを振られたときにとっさに切り返す力のことだと思います。また、「0から1を生み出す」というのは、ネタを作る能力のことだと思います。この2つは、いわば短距離走と長距離走のようなもので、使う筋肉の部位が違います。両方の能力を高いレベルで兼ね備えていることが、ゆりやんさんが短期間で売れっ子になった理由だと思います。

 いざというときのゆりやんさんの瞬発力は、同世代の芸人の中でも際立っています。バラエティー番組で話を振られたときに、ほかの芸人よりも一拍早くゆりやんさんがギャグを返したりしている場面をよく目にします。

「調子乗っちゃって」「落ち着いていきや〜」「おおきにです。おおきにと申します。名前?」など、彼女にはお決まりのパターンがいくつもあり、それを素早く堂々と繰り出して、笑いを生み出すことができます。たとえそれ自体が笑いにつながらないとしても、空回りした彼女をMCの先輩芸人が巧みにフォローして笑いに変えてくれます。

 普段のゆりやんさんは、どちらかというと気が弱くておとなしい人物です。ただ、彼女は舞台上では決して引っ込み思案にはなりません。むしろ、本来は気が弱いからこそ、いざというときにだけ開き直って、自分を奮い立たせて前に出ることができるのだと思います。その人並み外れたハートの強さに関しては、松本人志さんも「人のことを一切気にしない、わが道を行くタイプ」と語っていたことがあります。