事件の背景には、老老介護の破綻があった。夫婦と同じマンションの住人の証言が裏づける。

「奥さんは10年以上前に脳梗塞で倒れています。左半身が不自由で、旦那さんが介護し、週に2回のリハビリに通っていました。ただ、今年の2月に旦那さんも病気を患ったため、奥さんはリハビリをやめて旦那さんの世話をしようとしたそうです。

 旦那さんの状態ですが、足がもつれて階段で転んでいる姿を見ました。病院に行って帰ってきてからも転んでしまうくらいよろよろで、しゃべり方もしどろもどろでした」

 海老名市の福祉担当者は、

「幸江さんにはケアマネージャーがついていました。旦那さんも要介護状態になったのですが、ケアマネージャーがつくまで地域抱括支援センターが支援に入っていました。介護保険の中で使えるサービスを模索していました」

捜査を進める海老名警察署
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 そんなさなかに“無理心中未遂”は起きた。事情を知る知人によれば、幸江さんの要介護度は2で、特別養護老人ホームに入れる一歩手前のレベルという。

「認知症も進んでいた。買い物に出かけるのは難しく、ご主人が担っていた。お弁当の宅配を夫婦で取っていることもあった。

 ご主人が幸江さんを支える形で10年ほどたったが、ご主人自身も要介護となったため、今後は夫婦だけの生活が難しいという話し合いになっていたらしい。今年になってから疎遠にしていた親族にも連絡をとっていた」(前出・地元関係者)

「主人か取り返される」

 10年間、2人だけの世界で助け合い暮らしてきたところに、新たな支援が入ることが、あらぬ波風を立てることになった。疎遠になっていた親族とは、宇留江容疑者の前妻と2人の間の子ども。

「幸江さんは後妻ですから複雑な心境だったのでしょう。そこそこの資産家だったため、“自宅に乗り込まれて自分の財産まで奪われるんじゃないか”と疑心暗鬼になってしまっていたらしい」

 と前出・地元関係者。波紋はさらに広がった。