たった1人の“武者修行”
専属コーチとなると、スケジュールもかなり拘束されてしまう。契約のハードルが高いのは確かだが、いったいなぜ、このようなズレが生じてしまったのか。
「一般的に、交渉では選手とコーチの間にスケート連盟関係者が介在します。羽生選手を指導するブライアン・オーサーコーチは、元フィギュアスケート連盟の城田憲子氏の紹介です。宇野選手とエテリ氏の間にも関係者が懸け橋にはなったと思いますが、行き違いが生まれてしまうのは連盟の詰めが甘かったとしかいいようがありません」(同・スケート連盟関係者)
宇野は今シーズン、本当に1人で戦うのだろうか。
「ジャンプ指導を受けている本田武史氏をメインコーチとして迎える可能性はあるかもしれませんが、本田氏もアイスショーに出場したり解説者としての仕事もあったりと多忙なため、マンツーマンで見るというのは難しいでしょう。いろいろな合宿に参加しつつ、コーチも探していくという形を取ると思いますよ」(同・スケート連盟関係者)
“コーチ不在”という決死の覚悟を決めた宇野だが、今回はアクシデントで指導者がいなくなってしまったという特例だ。この緊急事態で、山田氏と樋口氏のもとへ戻るという選択肢はないのだろうか。
「今、宇野選手は1人でやることに前向きな姿勢を見せているので、古巣に戻ると周囲にネガティブにとらえられてしまったり“なぜ戻ったの?”と探られる可能性を避けているのかもしれませんね。これまでにコーチをつけないという決断をした選手の事例がないですし、それくらいリスキーなことなので、戻ってもいいと思うのですが……」(同・スケート連盟関係者)
山田氏はどう思っているのか。マネージャーに問い合わせてみたが、
「そういった取材にはご対応していません」
宇野の所属事務所にも問い合わせたところ、「当初より今回は短期合宿としての計画だったため、双方に相違はなく、今シーズンは武者修行として国内外の合宿に参加しながら見聞を広めていき、今後の方針を見極めていく所存です」と、あくまで“行き違いではない”ということらしい。
ボタンのかけ違いとはいえコーチがいない状況でも前向きな姿勢を見せている宇野。勇気ある行動がポジティブな結果を生むと信じたい。