シングルマザー間に税制の格差が
子育ての困難さはシングルマザーにもいえる。当事者団体『しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄』の代表、秋吉晴子さん(54)は、未婚のまま出産したシングルマザー。県営住宅で暮らしていた10年ほど前、急に家賃が上がった。管轄する国土交通省が所得要件を厳しくしたからだ。
「それまでひとり親は戸籍謄本を提出すれば、寡婦控除の対象でしたが、未婚の場合、死別や離別のひとり親と違って、対象外と厳格に適用することになりました」
寡婦(夫)は、配偶者と死別・離別したが、再婚をしていない人のこと。もとは戦争で夫を失った妻の生活を支えるためにできた制度だ。一定程度、所得控除を受けられる。
「退去か、家賃を多く支払うか。私だけでなく、未婚のひとり親の問題として県知事に陳情しましたが“法律で決められている”ことを理由に対象外となり、退去しました」
寡婦控除の適用除外になると、その影響は保育料にも跳ね返る。沖縄県だけの問題ではないが、県と県内の市町村に未婚者も寡婦とみなすように陳情した。
「沖縄市と宜野湾市は、首長のトップダウンで決めました。那覇市も時間がかかりましたが、認められました。それから厚労省も25の事業で“みなし控除”を適用しました。地道に動けば変わるんです」
その後も県内の子どもを支える団体と連携しながら、活動を続けている。
「同じひとり親なのに、男性との関係、つまり、最後まで添い遂げるのか、途中で別れるのか、最初から頼りにしないかの順で税金が重くなるのは、税制として不公平です」
人口動態統計('17年)によると、沖縄県は離婚率(人口1000人あたりの数)が2・44で全国1位。シングルマザーの出現率も高く全世帯に対して5・46%('13年調査)で全国の倍だ。
「県民所得が低く、子どもの貧困率は全国の2倍。3人に1人が貧困です。ひとり親家庭が子どもを大学に行かせるのは計画性や強い意志がないと難しい。一方、都市部から離れれば、貧困の度合いも地域のしがらみも強い。横並び意識で、母子家庭なのに? と言われることがあります」
未婚の割合も上昇傾向だが、東京と背景が違うと秋吉さんは指摘する。
「沖縄では、若年で妊娠すると、家族から“産めば?”と言ってもらえたりする。沖縄戦の影響なのか、せっかく授かった命、という意識があるのかもしれません。ただ、妊娠出産で高校中退しないですむよう、親子を支える仕組みが作れないと、貧困はなくならないと思います」