スタバのプライド
──確かに「タピオカ」「AI」「占い」と要素を詰め込みすぎている感がありますね。
そんななか、コーヒー店の『タリーズ』や『ドトール』も商品ラインナップにタピオカを加えたりと、大手チェーン店もタピオカに手を染めはじめています。回転寿司の『スシロー』は下からスマホのライトで照らすとタピオカが光る『光るゴールデンタピオカミルクティー』も発売していますね。
「正直そこまでしなくてもいいのに……とは思いますね。それに、光らせるためにスマホを下に置いてしまったら肝心の写真が撮れずにインスタにアップできないという弊害も出てきそうです。友達がいない人は注文するのが厳しいかもしれません。そういえば『スターバックス』にはタピオカのメニューがありませんよね。やはり、そこにはプライドがあるのでしょうか……」
──今や人気すぎて品薄になったタピオカの賞味期限を長持ちさせるために、定期的にガムシロップを混ぜて保存するという“追いガムシロ”をやっている業者もあるとの記事もありました。そもそもタピオカは主成分が炭水化物ですし、太る飲み物ですよね。
「台湾でブームだったときは太った人が増えたといいますしね。また、かつて“ダンボール肉まん”などが話題になった中国では現在、革靴と古タイヤで作られた偽タピオカが販売されているとニュースで見ました。
飲んだ人がCTスキャンを受けたところ、消化されずに体内に残っていたとか。意外と歯ごたえはよかったりするのかもしれないですが、こちらも命がけですよね。それにしてもなぜ革靴やタイヤなどいちばん食べたくないものをチョイスしたのでしょうか」
──材料費の観点からしてもタピオカより革靴のほうが高そうな気もしますしね……。日本では街中に容器のプラスチックカップがポイ捨てされるなどといった『ゴミ問題』も取り上げられてます。このタピオカブームに終わりはないのでしょうか?
「私のようにのどに詰まる人が増えて“危険な飲み物だ”という風潮ができたらブームは去るのかもしれません。ただ、一時期ブームになっていた『白いたい焼き』もモチモチの食感を出すために材料にタピオカ粉を使っていましたし、仮にブームが終わっても形を変えて私たちの生活に弾力をもたらし続けそうです。
それでもいつかみんな、ほうじ茶やホット緑茶が一番いいと思える時代がやってくると思いますね。タピオカはそのボリューム感だったり甘さだったりと、人の寂しさを満たしてくれるようなドリンクにみえます。インスタグラムに“タピ活”とハッシュタグをつけてインスタ映えする写真を投稿するのもつながりを求めているからこそのことかと。
アーユルヴェーダやヨガを極めたような霊格の高い人たちは白湯を好んで飲みますよね。そういった方たちからすればタピオカはとても享楽的な飲み物に感じられてしまうのかもしれません。“味つきで具ありの甘い飲み物、まだ飲んでるの?”と」
辛酸なめ子/漫画家・コラムニスト。
東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)『おしゃ修行』(双葉社)『魂活道場』(学研)、『ヌルラン』(太田出版)など。