「今年3月に退職したからわからないよ。心筋梗塞を患ってドクターストップもかかった。引き継ぎをして、あとは若い人たちに任せましたから」
東京都千代田区神田錦町の私立男子校「正則学園高校」で今年1月8日、同校教師・非常勤講師計17人らが正門前に集結し、理事長室で毎朝行われる“早朝挨拶儀式”をストライキした騒動。あれから半年以上がたち、その後の経過について当時の理事長に直撃取材すると、冒頭の言葉が返ってきた。
ストライキ後の教員たちは……
儀式は、一部の非常勤講師を除く全専任教師約40人が午前6時半までに登校し、理事長室の前の廊下に一列に並んで理事長の登校を待つ。約10分後に理事長が登校すると先頭から1人ずつ順番に理事長室に入り、
「おはようございます」
と挨拶をして、室内の神棚を拝む。理事長が質問することもあるため、全教師が挨拶を終えるまでに約1時間弱かかることもあったといい、これに時間を割くことなどに反発したストライキだった。
関東の私立校教師らでつくる労働組合『私学教員ユニオン』の担当者は、
「私たちが指摘した点に関しては全面的に改善され、無事にいい環境になりました」
と問題が解決ずみであることを明かした。同校在職の現役教員は、
「早朝挨拶の儀式はもうありません」
と儀式が撤廃されたことを喜んだ。
「精神的・経済的に余裕が生まれたことがいちばんよかったですね。職員室では笑顔も増えたし、ストライキ以前と比べると生徒の話をするようになりました」(前出・現役教員)
同ユニオンによると、学校側は早朝儀式の廃止以外にも「正規教員の減額されていた賞与の過去2年間分の支払い」「正規・非正規ともに、不払い残業代過去2年分の支払い」なども約束したという。
大きく変貌を遂げた正則学園高校の新校長は、
「ストライキ以降も話し合いの場を複数回もうけ、結果としてよくなったということだと思います」
環境がよくなったことで、教員同士で思いやる姿勢なども生まれ、できないことはチームや学年で解決しようという雰囲気があるという。
「これからもよりよくなるように、どうしていくのかということを考えていきます。今は完全に生徒ファーストで考えられるようになりました。ストライキに参加した教員は今も働いています。みんな生徒も正則学園も好きなんですよ」(前出・現役教員)
前理事長の潔い決断が学園を変えた。