黒田をよく知る産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘さんはこう言う。
「日韓交流で日本女性が活躍すると、イメージの改善や日本理解に大きく影響します。福美さんは、韓国語が上手だし美形なので、韓国の人々にとっても説得力があり、親近感を持たれる存在なんです」
究極のガイドブックを作りたい
韓国報道に従事する以前、黒田はその派手な見た目から「悪目立ち」する使いづらい女優だったらしい。飲み屋の女、キャバレーの女、主人公の恋人を奪う敵役が多かった。
ところが、レポーターとして活躍を始めると、「社会派の人」という印象が強くなる。
「トレンディードラマ全盛で働く女性たちが描かれた時代に“お局役”としてちょうどよかったんですね。要するに、ちょっと知性を感じて、主人公たちよりは年配の“キャリアの女性”。弁護士とか、編集者とかね。実際に私がやっていたこととイメージがシンクロしたわけですね」
そのとき黒田は、すでに「次の一手」を考えていた。
「書店で韓国のガイドブックを見ても、気のきいたものは何ひとつない。これじゃあ、1回行ったら、またソウルに行く人なんていないよと思った。私の知るソウルは魅力的で面白いところがたくさんあるのに全然書かれてない。究極のガイドブックを作りたい、ドラマの番宣インタビューでそんな発言をしたんです」
その記事を読んだ出版社が名乗りを上げ、ソウルでロケを敢行、1994年『ソウルの達人』が出版された。
当時、編集を担当した和泉秀郎さん(61)が言う。
「黒田さんは、自分でアポイントを取り、取材もこなし、撮影のディレクションをしながら、自らモデルとなっていました。宿泊ホテルの彼女の部屋は、さながら編集部のようでしたよ」
普通のタレント本ならば、本人が何度かインタビューに答えて、あとはベテランのライターと編集者で作り上げることが多い。だが、黒田の場合、彼女とコーディネーターとカメラマンが毎日ソウルの街を走り回り、取材を重ねた。
デザインを手がけた勝俣正希さん(67)は、彼女の目的意識の高さをこう評価する。
「黒田さんは、本作りのことはよく知らなくても、何を目指すかが明確でした。でもときどき無理難題を言ってくるので弱りましたね(笑)」