悩んだ末に“できた”と思えたら、開放感に満たされるというか。例えば『きのう何食べた?』でお三方(内野聖陽さん、西島秀俊さん、山本耕史さん)とお芝居をしたとき、みなさんと意見交換して、本番では集中しつつ“自分のキャラも出さなきゃ”と思いながら演じて、最後の最後にふっと力が抜ける瞬間がありました

 そのとき“ああ楽しかったな、この現場。作品作りに参加できてよかったな”って初めて実感できたんです。舞台もやっぱり、終わった後に感じるタイプですね。公演期間中は必死で、一切、楽しいとは思いません。

 それに役としてそこにいるわけですから、演技に手ごたえを感じるなんていうのは磯村勇斗が出てきちゃってるということで、ダメなんですよ」

 これだけ上り調子でも、奢らず、謙虚で、ストイック。自分で思う“磯村勇斗の魅力”とは? と聞くと、またまた役者魂あふれる言葉が返ってきた。

いや、僕は、魅力がないと思いますねえ(笑)。逆に、魅力がないからいろんな役ができると思っていて。

 自分はゼロで、真っ白でいたいと思っているんです。役に染まりたいから。でも染まる前の真っ白い状態って、特に魅力がないんですよね。真っ白い壁を見ていてもつまらないでしょ? 

 そこに色が加わるから魅力ができあがる。例えば、無の自分に役の“ジルベール”が入ってくると、魅力が引き立つというか。そういうことでいいんじゃないかな。役で魅力を見せることができたら、それが僕の生きがいなんだと思います

(取材・文/若林ゆり 撮影/吉岡竜紀 ヘアメイク/佐藤友勝 スタイリング/齋藤良介)

PARCOプロデュース2019『プレイハウス』

 劇団・月刊「根本宗子」の主宰にして劇作家・演出家・女優の根本宗子が、10人組の異色アイドルグループGANG PARADE(通称ギャンパレ)と磯村勇斗のW主演で送る新感覚ミュージカル。ギャンパレの曲をミュージカル・ナンバーとして使い、歌舞伎町に生きる風俗嬢たち、ホストの姿をポップに綴っていく。8月25日~9月1日、東京芸術劇場 プレイハウス、9月28日、大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演される。詳しい情報は公式サイト(http://www.parco-play.com/s/program/playhouse/)へ。

いそむら・はやと ●1992年9月11日、静岡県生まれ。2015年、『仮面ライダーゴースト』の仮面ライダーネクロム/アラン役で注目され、2017年にNHK連続テレビ小説『ひよっこ』でヒロインの結婚相手、前田秀俊役に抜擢される。さらにドラマ『今日から俺は!!』の相良役、『きのう何食べた?』の“ジルベール”航役などでブレイク。映画の出演作には『ういらぶ。』『春待つ僕ら』など。現在、TXドラマ『サ道』、KTV『TWO WEEKS』に出演中。