まさに超人
「端的に言ってしまえばただのベンチプレスなのですが、ものすごいんですよ。下肢に障がいのある方がやるスポーツなので、健常者とは違い足で踏ん張ることができない。
胸から下の腹筋などが使えない選手の場合は胸や腕の筋肉だけで持ち上げている。想像がつくと思うのですが、これはものすごく過酷ですよ」
ベンチプレス台の上に足を伸ばした状態で寝そべり、ベルトで下半身を固定して競技を行う。まさに超人だ。
「世界トップであるイランのラーマン選手は107キロ超級の選手ですが、健常者が持ち上げた重さの記録を抜いているんです。
'16年のリオでは310キロを持ち上げている。いまだに人類の歴史でいちばん重いものを持った人がこの人です。カッコいいですよね」
ほぼ同じ条件で行う健常者の当時の世界記録を35キロも上回っていた。
「日本人は苦戦している競技ではあるんですが、東京大会でラーマン選手は間違いなく世界記録の更新にチャレンジするはず。新たな記録が誕生する瞬間を見に行くのも面白いと思います」
最後は日本が初めて金メダルを獲得した団体競技だ。
「視覚障がいの選手たちで行われている競技で、鈴の入ったボールの音を頼りにボールを投げ合ってゴールに入れる競技です」
その名もゴールボール。全員の視力を均一にするため、アイパッチとアイシェードで選手は視界を二重に塞がれる。“音”を頼りにプレーするだけあって、その戦略は多彩だ。
「こっそり移動して投げるとか、足音が鳴らないようにパスを回すとか、音を頼りに戦う競技ならではの技術があります。
見えない中でボールを止めて立ち上がり相手のゴールに向けてボールを投げる。瞬時に自分がどこにいるのかを判断して行動できるのがすごいところ。
背の高い欧米の選手に対して、守備のうまい日本がどう攻めていくのかも楽しみです」
ただ観戦するにあたって守ってほしいことがあるという。