音楽や英語で国際感覚を持ってほしい
午後1時半からは「こども寺子屋」。いろいろなことに興味を持つキッカケにしてほしいと、プログラムにも工夫を凝らしている。最初はボランティアの大学生による紙芝居や絵本の読み聞かせだ。
次はトニーさんの英語レッスン。生まれ故郷のガーナは旧イギリス植民地で、1957年に独立した。家では部族語で話すが、学校や仕事で使う公用語は英語だ。
出番の直前、トニーさんは胸に手を当てて、緊張した面持ちを浮かべていた。
「毎回、子どもたちがどんな反応をしてくれるかわからない。ドキドキするよ」
絵や文字が書かれた紙を手に子どもたちの前に座る。レッスンを始めると、よどみない口調で質問を投げかける。
「smallは日本語で何て言うの? わかる人は手を挙げてねー」
「小さい」
「私より、日本語うまいじゃん(笑)。その逆は?」
「ビッグ」
小学生はもちろん、幼児も張り切って答えている。
小さな子の多くは最初、トニーさんを見て泣き出してしまうという。黒人と会ったことがないのだろう。
トニーさんは泣かれてもかまわずに頭をなで、名札を見て「hello ○○ちゃん」とやさしく話しかける。
昨年初めのこと。トニーさんが「英語のレッスン始めるよー」と言うと、4、5歳の男の子が走り寄ってきた。
「いつも私を見て泣く子よ。どうしたのと思ったら、ハグしてくれたの。Oh! 私、ビックリしちゃった。私がやっていることは間違ってないと思って感動したよ。
私みたいな外国人に慣れていれば、国際感覚がついて将来的に役立つかもしれない。その子にとっては大きな1歩です。すごくうれしいよ」