だからこそ、あらかじめ伝えておくことの重要性を財前さんは説く。

「祖母や母の着物のはぎれを、自分でスカートに仕立てました。お気に入りです」
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エンディングノートでもいいんですが、私がいざ書こうとしたら、死に直結することばかり。今、すごく元気なのに、“棺に納めてほしいもの”とか。とにかく書きづらかったんです。そして、書いたことがそのまま決定打になりそうな怖さも感じました」

 とはいえ、誰もがいつ亡くなるかはわからない。

「私がいま亡くなったとして、私の葬儀や遺産相続などを年老いた両親や中学生の息子にできるのか? それは無理だし、かわいそう。亡くなって悲しい思いをしてるうえに、何がどこにあるかもわからない不自由な生活をさせるわけにはいかないですよね」

自分の人生に最後まで責任を

 そこで財前さんが考案したのが、“ありがとうファイル”だ。

財前直見=著『自分で作るありがとうファイル』(光文社)  ※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします

大切なものは何でもコピーして、100円ショップのファイルに入れておけばいいんです。例えば、お財布の中のクレジットカードや免許証、健康保険証。さらには、貯金通帳や保険証書なども。パスワードなども紙に書いてファイルへ。もちろんお金のことだけじゃなく、ものの所在や価値、誰とお付き合いがあったかなども。私は、息子のお嫁さんになる人に引き継いでもらいたい家庭の味のレシピも入れてます」

 エンディングノートとの違いを尋ねると、

大切なものがひとつにまとまっていますし、いまの生活に役立ちます。災害にあったときに持ち出せば、いろんな問い合わせもできる。何よりファイルなので、気が変わったら書き直して入れ替えればいいんです」

 ありがとうファイルは旅立つ人、残された人が互いに“ありがとう”と言い合える、愛あるものだと財前さんは語る。

「やっぱり“自分の人生に最後まで責任を持つ”ってことだと思うんです。死んだ後のゴミまで含めて。そうでないと、息子や親など誰かにやらせることになってしまう。それは愛情がないなと、私は思います」


《PROFILE》
ざいぜんなおみ。女優。1984年デビュー。大分県在住。『お水の花道』シリーズほか、『ごちそうさん』、『おんな城主 直虎』などヒット作に多数出演。9月30日スタートの朝ドラ『スカーレット』では大野陽子役