反町隆史と竹野内豊が主演した人気テレビドラマ『ビーチボーイズ』(1997年)のロケ地となった布良で、住民のため忙しく歩き回るのは神田町地区の区長を務める嶋田政雄さん(75)だ。

リーダーシップを発揮する嶋田政雄さん。被災した自宅前で=館山市
リーダーシップを発揮する嶋田政雄さん。被災した自宅前で=館山市
【写真】台風の威力を物語る崩壊した家屋

まだまだ続く復旧作業

 地区にはひとり暮らしの高齢者が多く、嶋田さんもそのひとり。すでに子どもは自立し、妻を9年前に亡くして独居生活を送る。

台風を甘く見ていた」

 と言う。

「上陸のピークは9日午前2時半~3時半ごろ。風が自宅の雨戸を吹き飛ばして窓ガラスを割った。風が室内に入ると屋根を持ち上げられると思い、割れた窓のところに別の雨戸を持ってきて中から必死に押さえた。2時間くらいそうやっていたので筋肉痛になりそうだった」(嶋田さん)

 その日から停電は8日間、続いた。

 取材したのは電力供給が回復した翌17日夕。

 嶋田さんは、海に沈んでゆく夕日を眺めながら「久しぶり」という冷えた缶ビールを飲んでいた。しかし、飲み始めたところで取材を受け、取材中も携帯電話に弁当配布などを相談する電話が4本もかかってきた。

「早くすべての家を直してあげたいが人手が足りないんだ。直す優先順位について、まずひとり暮らしの人と、屋根を飛ばされた人が先だと説明した。だって雨で濡れたら家に住めなくなっちゃうから。

 それと、ボランティアには助けられています。朝早くから夜遅くまで、本当に頭が下がるよね」(嶋田さん)

 ぬるくなったビールを飲み干した後、懐中電灯を手に防犯を兼ね夜の町へ。こちらが頭の下がる思いだった。