理想の絵を探し求めて
──先ほどターニングポイントとして『天然コケッコー』のお話がありましたが、この影響は大きかった?
そうですね。自分の中では冒険したつもりなんですけど……。
──第一印象として絵ががらりと変わりました。舞台は田舎なのにとてもスタイリッシュな絵で、こう来たか!と感動しました。
ありがとうございます。絵に関しては、なかなか好みの形に到達できなくて。
──以前に読んだインタビューで「自分の絵をうまいと思わない」とおっしゃっていて、くらもち先生ほど絵がお上手な方もいないのに、不思議に思ったんです。
下手でもいいんですけど、自分で好きだと思える絵に行かないんです。いまだに。だからきっとまたなにか描いたら、絵が変わると思います。
──理想にたどりつけない?
ほかのマンガ家さんの絵では好きな絵がいっぱいあるんですよ。でも、じゃあそれをまねてみようかと思っても、自分のものにはならないんです。その人を超えなきゃ意味がないし。
──どんなマンガ家さんの絵がお好きなんですか?
私の絵は生真面目な感じのかちっとしたものになってしまいがちなので、もうちょっとやわらかい線が理想ですね。谷川史子先生とか、田渕由美子先生とか、萩岩睦美先生とか……。ああいうタッチは絶対に描けないんです。ふわっとした感じの……。
──綿菓子のような?
そうです! 谷川史子先生の旦那さんの青木俊直(※4)先生が究極の完成形ですね。細かいわけではないのに形は取れてるし、最短の、いちばん少ない本数の線で、確実なものを描かれてる。
──それは意外でした!
ああいうふうになりたいとは思うけど、無理(笑)! 私の本質にはないものなので。そういう方向に向かいながら、自分のスタイルが確立できたらいいとは思うんですけど。