犬の『幼稚園』が誕生
そうやって、段階的に生体販売から、アフターサービスに切り替えていった。社長も「何とか生体販売をやめることはできないのか」と頭を悩ませていた。
「でも、すぐには切れない。生体販売をやめる準備として出てきたのが『幼稚園』だったんです」
これは、人間の学校や幼稚園のように、犬を預かって専門のトレーナーによってトレーニングを施し、飼い主に返すというシステムだった。
「週に1回で月額いくらというシステム。メリットが認知されるようになって、だんだん頭数も増え、今、100頭くらい。ビジネスの大きな柱に成長しました」
専門的な知識を学んだスタッフが担当し、ただ預かるのではなく、あくまでもトレーニングがメイン。
取材当日も、エレベーターに乗るのを怖がるワンちゃんをスタッフがなだめながら、乗れるようにじっくりと訓練していた。
そして、ペットホテルも改装。ただ泊まるのではなく、遊び場を作った。
トリミングにしても、技術の向上のために講師を招いたり、店内でもコンテストをやったりさまざまなイベントを企画。
「とても集客に効果がありました。飼い主さんのネットワークってすごいんですよ」
方針転換後の売り上げは、どうだったのだろう。
「3月以前とそれ以降ではほとんど変わりませんでした。“生体販売中止”という言葉がメディアに出てからいろんな取材が入りましたからね。来客数もグッと増えました」
最近では、動物愛護団体に場所を提供して、猫の譲渡会なども行われている。
敵対していたはずの愛護団体とペットショップ──それがいい関係を築くこともあるのだ。