「そんなことをするやつじゃなかった……」

 古くからの知人は、記内容疑者が神奈川県内のヨットチームに所属し、国内外のレースに出場して好成績を収めていた過去を明かす。

困惑する母親

かつてはこのマリーナで活躍していたが……
かつてはこのマリーナで活躍していたが……
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「熱血漢でまじめな海の男という感じのヨットマンでした。競技も頑張っていました。ヨットの世界では変なことをしたり、モラルがないようなやつはすぐにはじかれますから、過去にそんな話は聞いたことなかった」

 以前、記内容疑者が住んでいた家の近隣住民は、

「最初は奥さんと犬がいたけど、離婚してひとりで住んでいました。ときどき庭にハンモックを出してひとりで寝そべっている姿を見かけたことがありましたけどねぇ」

 ヨットマンとして満たされていた日々は本人のブログに残されている。ヨットレースを頑張り、後輩や友人とも交流し、愛犬と散歩に行くなど充実していた容疑者はどこで人生の舵取りを間違えたのか。

 離婚が心の闇として根深く残り、憎き歩きスマホ女性への攻撃に変わったのだろうか。

 愛知学院大学の岡本真一郎教授(社会心理学)は、加害者の心理を推測する。

「失恋など過去、女性との間で起きた面白くない経験がきっかけになっている可能性も。体当たり事件は悪く言えば復讐と言えます」

 かつて容疑者がヨットの拠点としていた葉山マリーナや相模湾の近くの閑静な住宅街に記内容疑者の実家はある。

「私たちも、なんでそんなことになったのかわからないんです……本人ももういい年齢ですから、自分のことは自分で……」

 と言葉を絞り出す年老いた母親は困惑するばかりだった。

 被害の大きさを考える前に、敵意だけを相手に向けた身勝手な加害者。殺伐とした事件に、人間の闇を見る思いだ。