『相棒』の隠れた魅力とは

 成宮氏についても、イメージダウンにはつながらず、ファンはむしろ、そういうところも含めて魅力だと感じているのではないか。そもそも『相棒』(テレビ朝日系)という代表作自体、コアな視聴者にとっては、水谷豊ともうひとりの男性俳優が織りなすBL(ボーイズラブ)的構図が萌えにつながっている。

 初代の寺脇康文は大の水谷崇拝者だったし、2代目の及川光博は中性的なキャラ、3代目の成宮を挟んで、4代目の反町隆史についても水谷との仲よしぶりが盛んに喧伝(けんでん)されるのは、その手の話が求められているからだろう(そして何より、水谷自身がかつて『傷だらけの天使』(日本テレビ系)で萩原健一の相棒を演じ、ブレイクした人である)。

 また、成宮氏は声優としての代表作となったアニメ映画『あらしのよるに』で、中村獅童扮する狼と友情を育む羊を演じた。気弱で優しく、それでいて芯の強さもあるあのキャラは彼しかできないハマり役だったといえる。こうした役者としての得がたさが待望論を呼ぶわけだ。

 かといって、3年前の騒動では、引退を決めてしまうほど傷ついたのも現実だろう。だが、芸能界にはふてぶてしい人もいる。美川憲一だ。大麻で二度逮捕され、地方のキャバレーなどを回る日々を送りながらも、コロッケのものまねを機に復活。その後はおネエキャラを全開させ、以前を超える人気を得た。NHK紅白歌合戦にカムバックすると、そこから19年連続出場(通算では26回)を果たすのである。

 その原動力となった、豪華衣装について語った言葉がこれだ。

私はお客様に夢を売る商売でしょ。だけど、あるとき、現実での醜い部分を見せちゃったのね。だから、そのハンデを取り返すためにも、ぜいたくで華やかで夢のある私を見せたいの

 なんだか都合がよすぎる気もしないではないが、このポジティブな精神もまたスターの条件だ。成宮氏も、もしその気になれば芸能界に復帰して、ファンにまた夢を見せてもいいのではないか。俳優・成宮を待望する声、それはけっして「フェイク」ではないのだから。

以前よりワイルドな印象になった成宮寛貴(インスタグラムより)
以前よりワイルドな印象になった成宮寛貴(インスタグラムより)
【写真】ファンが選ぶ「いちばん良い相棒」や歴代の共演者
PROFILE
●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に「平成の死」「平成『一発屋』見聞録」「文春ムック あのアイドルがなぜヌードに」などがある。