拡散ボタンを押した“だけ”が命取り
「Twitter上でとある情報があったとして、それが数回リツイートされてしまうと、それがデマだったとしても真実かのように化けてしまいます。それがひとり歩きし始めると、こちらでは制御ができなくなる。リツイート数が多ければ多いほど、真に受ける人が増えてしまうんです。あくまでも“共有された数”というだけであって、数が多いから情報の信憑性が高いというわけではないということを知ってほしいです」
というのも、今年9月、橋下徹元大阪府知事が自身に関する投稿をリツイートしたジャーナリストを相手取り、「事実とは異なるにも関わらず、パワハラをする人物だという印象を拡散された」と大阪地裁に提訴。橋下氏の勝訴判決が下され、賠償金を支払うよう命じられたのだ。たった一度、拡散ボタンを押すという行為をした“だけ”のようにも感じるが、
「実は、僕の件で'08年に捕まった人たちの中には、2ちゃんねるのデマや中傷の書き込みをコピーして、僕のブログのコメント欄に貼りつけた“だけ”で書類送検された人もいます。最初にツイートした人の情報が借金だとしたら、リツイートボタンを押すという行動は、自分は連帯保証人になることに同意したと考えなければいけないと思います。Twitterでの“いいね”は“承認”であって、自分が気になったものを集めているだけですが、リツイートは“拡散”する行為。全世界にデマや中傷を広める片棒を担いでいるということを忘れてはいけません」
SNS上に「内緒」は存在しない
主にアルバイトの人などが勤務先で悪ふざけをした動画をSNSに投稿し炎上する『バイトテロ』も、情報の拡散性を軽視してしまった結果だという。
「例え、面白がってくれるような知り合いにしか見られないように設定にしていたとしても、悪意なく第三者に見せてしまうこともありえます。また、Instagramのストーリーは24時間で消える設定だと考えている人もいますが、24時間も世界中に公開されているんです。見ている人がスクリーンショットや画面の挙動を動画で撮影すれば、デジタルタトゥーとして一生残ってしまう。SNSは、内緒の話をしているつもりでも、全世界の人が見られる状態にあると思っていたほうがいいと思います」
万が一、自分がデマや中傷被害に巻き込まれてしまった場合、どうしたらいいのだろうか。
「僕のところにもたくさんの相談がきますが、TwitterやInstagramに嫌がらせをしてくるアカウントを報告しても、“利用規則の範囲内”となってしまい、情報開示やアカウントの凍結、強制退会などの措置に至ることはほぼありません。
もし法的措置に出る場合は、まず第一にURLがわかる状態でスクリーンショットを撮るなど、証拠を集めます。第二にその後、誹謗中傷を書かれたとしても絶対にやりあわないこと。つい感情的になって相手に対して乱暴な言葉を使ってしまうと、被害者と加害者の関係性が崩れてしまいます。基本的にはヤラレっぱなしの状態で初めて被害者として成立するので、“そういうことはやめてください”“事実無根です”と毅然とした対応をすることです。そのうえで、“これ以上やったら刑事告訴します”と警告してください」
キクチ氏によれば、「警告を無視する人に対しては、悪質性が強いと判断される」のだという。