遡ること9年前、小栗旬は初監督映画『シュアリー・サムデイ』の完成報告会見でこう断言した。
「タイトルは直訳すると、『いつか、きっと』。僕の“いつか、きっと”は俳優のユニオンを作ることです。俳優が自分の意見を持って、自分の責任を持って活動するという環境ができればいいと思っています」
小栗、動きます─。この表明を機に、同作に出演した鈴木亮平、勝地涼、ムロツヨシのほか、親交の深い山田孝之や瑛太、藤原竜也といった俳優仲間に声をかけて準備しようと動いていたという。
'14年、とある雑誌で行われた鈴木亮平との対談企画でも“俳優組合”の構想に言及。
「ぼちぼち本格的にやるべきだと思ってます。でも組織って、とてつもなくでかいから、自分は誰かに殺されるかもしれないくらいの覚悟で戦わないと、日本の芸能界を変えるのはそうとう難しいですね」
理不尽な契約、下がるモチベーション
芸能界ではたびたび、所属事務所とタレントとの契約問題が話題になっている。
「契約が理不尽だったり、撮影の現場などで過酷な労働を強いられたり。労働組合があれば、ストライキや団体交渉などで問題提起することができますが、俳優を含めた芸能人はその仕組みがないため、すべて泣き寝入りするしかない状況が続いているんです」(スポーツ紙記者)
だが、彼をここまで本気にさせた理由はほかにあった。それは、映画界にはびこっている慣習に嫌気がさしていたからだという。
「映画界というのはいまだに昔の体質が根強く残っている業界で、特に映画配給会社が利益を多く得られる仕組みになっています」(映画関係者)
小栗が異を唱えていたのは、映画の興行収益の配分だった。
「6割が配給会社、ビデオメーカーと製作委員会に3割強、監督やキャストには約1割しか入ってこないようなんです。数十人のキャストやスタッフでこの1割の興行収益を分けるので、ひとりひとりの手元に入ってくるのは雀の涙ほどの金額になってしまう。
しかもどんなにヒットしても割合が変わることはなく、結局は配給会社が大幅に儲かる仕組みになっている。もちろん出演料は別途、支払われますが、小栗さんは“これでは映画をヒットさせようというモチベーションは上がらない”と嘆いていました」(同・映画関係者、以下同)
彼は、ヒット作を出しても固定のギャラとわずかな成功報酬しかもらえない俳優の立場と権利を守るために、印税のような制度を作ろうとしていたという。それがいい作品を生むことにつながるとも信じていた─。
「このままでは業界全体がよくならない。仕組みを変えていかなければならないという思いが、彼を“組合結成”へ突き動かしたんだと思います」